マイク・フラナガン (映画監督)

マイク・フラナガン：ホラー映画界の鬼才

マイク・フラナガン（Mike Flanagan、1978年5月20日 - ）は、アメリカ合衆国出身の映画監督、プロデューサー、脚本家、編集技師です。主にホラー映画の分野で活躍しており、監督作品の多くで脚本、製作、編集も兼任しています。彼の作品は、安易なジャンプスケアに頼らない、心理的な恐怖と深い人間ドラマを描き出す演出が特徴です。その作風は、スティーヴン・キング、クエンティン・タランティーノ、ウィリアム・フリードキンといった著名な映画人からも支持を得ています。

生い立ちと映画への目覚め

フラナガンはマサチューセッツ州セイラムで生まれ、カトリック教徒の家庭で育ちました。父親がアメリカ沿岸警備隊に所属していたため、幼少期は転居を繰り返す生活を送りました。セイラムでの生活は短期間でしたが、セイラム魔女裁判や怪談、ホラー小説などへの強い興味を持つきっかけとなりました。また、10代の頃にはニューヨーク州のガバナーズ島に滞在し、廃墟や古い刑務所といった環境が、彼の怪談への興味をさらに深めました。

最終的にメリーランド州のブーイに移り住み、大司教スポルディング高校を経てタウソン大学に進学しました。当初は中等教育の歴史教師を目指していましたが、大学に映画学科があることを知り、専攻を変更。2年生になると自主映画の制作を始め、編集技術を習得しました。初期にはラブストーリー映画を制作していましたが、観客の反応が芳しくなかったことから、ホラー映画の制作に方向転換しました。

キャリアの始まりとNetflixとの契約

2005年、フラナガンは地元のCM制作会社で働きながら、会社の機材を使って初の長編映画『Oculus: Chapter 3 – The Man with the Plan』を制作しました。低予算での制作を余儀なくされたため、視覚的な要素に頼らない、会話劇を中心としたホラーストーリーを考案しました。

その後、着実にキャリアを積み重ね、2019年には、『ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー』の制作発表と同時に、長年のコラボレーターであるトレヴァー・メイシーが代表を務める制作会社イントレピッド・ピクチャーズにパートナーとして加わり、Netflixと独占契約を結びました。この契約により、フラナガンはNetflixで数々のホラー作品を制作し、世界的な評価を得るようになりました。

Netflixとの契約終了、そして新たな挑戦

2022年12月、フラナガンとイントレピッド・ピクチャーズはNetflixとの契約を更新せず、アマゾン・スタジオとファーストルック契約を締結しました。そして2024年5月には、ブラムハウスが手がける『エクソシスト』シリーズの立て直しのため、フラナガンが脚本・監督を務める新作映画の製作が発表されました。本作は、前作『エクソシスト 信じる者』の続編とはならず、「根本を覆すアプローチ」で企画されており、新たな『エクソシスト』ユニバースを舞台に、完全に新しい物語が描かれる予定です。

私生活と作品への影響

フラナガンは、小学6年生の時に初めてスティーブン・キングの作品に出会い、以来、キングの作品を愛読しています。また、ユダヤ教、ヒンドゥー教、イスラム教など、様々な宗教の研究にも没頭しており、特に仏教には数年間深く関わっていました。これらの経験は、彼の作品に深みと複雑さを与える要素となっています。

私生活では、以前、『人喰いトンネル MANEATER-TUNNEL』に出演した女優のコートニー・ベルと交際しており、2人の間には息子がいます。2016年2月には、女優のケイト・シーゲルと結婚し、2人の間には娘が生まれました。シーゲルは、フラナガンの作品に数多く出演しており、公私にわたるパートナーとして、彼の創作活動を支えています。

フラナガンは、自身の作品の中でも特に『真夜中のミサ』に対する思い入れが強く、本作を「情熱的かつ極めて個人的なプロジェクトであり、カトリック教会で育った自身の生い立ちと、最終的に断酒と無神論に至った経験を扱った作品だ」と語っています。この言葉からもわかるように、彼の作品は、自身の経験や思想を深く反映した、非常にパーソナルなものであると言えるでしょう。

マイク・フラナガンは、ホラー映画というジャンルを通して、人間の内面を深く掘り下げ、観る者の心を揺さぶる作品を創り続けています。今後の彼の活躍から目が離せません。

もう一度検索