マイク正岡

マイク・マサル・マサオカ：日系アメリカ人の権利のために戦ったロビイスト

マイク・マサル・マサオカ（日本名：正岡優）は、20世紀において日系アメリカ人社会を代表する人物として知られています。彼はロビイストとして、戦時中の日系人の強制収容という苦難を経験し、戦後には日系一世の市民権獲得に尽力するなど、アメリカ社会における日系人の地位向上に大きく貢献しました。

生い立ちと初期の活動

1915年、カリフォルニア州フレズノで広島県出身の父と熊本県出身の母の間に生まれた正岡は、幼少期にユタ州ソルトレイクシティに移住し、家族でモルモン教に入信しました。ユタ大学では政治学と経済学を学び、ディベートチャンピオンにも選ばれるなど、若くしてその才能を発揮しました。太平洋戦争勃発前には、日系アメリカ人市民同盟（JACL）の書記長に抜擢され、ワシントンD.C.に赴任し、政治の世界に足を踏み入れます。

戦時中の苦悩と決断

太平洋戦争が始まると、正岡はJACLのキーパーソンとして、日系人の強制収容問題に直面します。当初、彼はルーズベルト政権との交渉を通じて、事態の穏便な解決を目指しましたが、アメリカ市民権を持つ二世の収容に反対し、一世のみを収容し二世を兵士として戦場へ派遣するという案を提示するなど、政府との摩擦も生じました。最終的には、戦時転住局に協力する姿勢に転じましたが、この決断は日系人コミュニティ内で「裏切り者」という批判を招くことになります。それでも正岡は、「今犠牲を払わなければ、二世にとって戦後は無い」と主張し、政府への協力を強行しました。

二世部隊の結成と従軍

戦況が悪化するにつれて、正岡はかねてからの主張であった「二世部隊」の実現に尽力します。政府も戦況を考慮し、日系人からの徴兵を検討するようになり、正岡の提案は受け入れられました。第442連隊戦闘団の編成に伴い、正岡は自らも軍に志願し、フランスやイタリアへ派遣され、「失われた大隊」の救出作戦にも参加するなど、幾度も死線を乗り越えました。正岡の兄弟も多くが従軍し、そのうち一人は戦死、二人も重傷を負うという大きな犠牲を払いました。

戦後のロビー活動と権利擁護

戦後、正岡は「外国で勝利を収めた戦争は、国内においても勝利を収めなければ意味が無い」という信念のもと、日系人の権利向上のために活動を続けました。反差別委員会の委員長に就任し、JACLの代表として、日系一世の市民権獲得を目指し、帰化権獲得同盟を結成。ウォルター・ジャッド下院議員と連携し、「移民帰化法案」の成立に奔走しました。その結果、1952年に同法案が成立し、日系一世の市民権獲得が実現しました。この功績により、正岡は「ワシントンで最も成功したロビイスト」と評されるようになりました。

その後と晩年

1968年には、日本政府から勲三等旭日中綬章を授与されました。1972年にJACLの役職を退いた後は、ロビー活動に専念しました。晩年、正岡は太平洋戦争の頃を振り返り、政府からの圧力があったことを示唆し、自身の姿勢を「大掛かりな“芝居”だった」と語っています。1991年、心筋梗塞によりワシントンD.C.で死去しました。彼の死後、ノーマン・ミネタは正岡を「20世紀において最も素晴らしいアメリカ人のうちの一人」と称えました。

マイク・マサル・マサオカの生涯は、困難な時代の中で、自らの信念を貫き、人種間の平等と正義のために戦い続けた一人の男の物語として、今も私たちの心に深く刻まれています。

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