マイケル・レイ・リチャードソン

マイケル・レイ・リチャードソン：栄光と挫折、そして再生

マイケル・レイ・リチャードソン（Micheal Ray Richardson, 1955年4月11日 - ）は、アメリカ合衆国出身の元プロバスケットボール選手であり、指導者としても活躍した人物です。196cmの長身と優れた身体能力を活かし、ガードとしてNBAのニューヨーク・ニックスなどでプレイしました。4度のオールスター選出を誇る実力者でしたが、薬物規定違反により1986年にリーグを追放されるという不運も経験しています。しかし、その後は米国のセミプロリーグやヨーロッパのプロリーグで活躍し、指導者としても成功を収めました。

生い立ちと学生時代

テキサス州ラボックで生まれたリチャードソンは、コロラド州デンバーのマニュアル高校に進学。当初は目立たない選手でしたが、徐々に才能を開花させました。高校卒業後はモンタナ大学に進み、1年次にはNCAAトーナメントでベスト16に進出。これは大学史上最高の成績となっています。2年次以降はエースとしてチームを牽引し、3年連続でカンファレンスのオール1stチームに選ばれました。大学通算1,827得点は学校史上2位、372アシストは同3位。1試合40得点、シーズン平均24.2得点という学校記録も保持しています。

NBAキャリア

1978年のNBAドラフトで、リチャードソンは全体4位でニューヨーク・ニックスから指名を受け、NBA入りを果たします。2年目の1979-80シーズンには先発に定着し、平均10.1アシスト、3.23スティールというキャリアハイを記録。史上3人目となるアシスト王とスティール王の同時受賞を達成しました。また、この年から3年連続でオールスターに、2年連続でオールディフェンシブ1stチームに選出されるなど、スター選手としての地位を確立しました。

1982年、バーナード・キングとの交換でゴールデンステート・ウォリアーズにトレードされます。ウォリアーズでは33試合に出場した後、ニュージャージー・ネッツに移籍。1982-83シーズンには平均2.84スティールで2度目のスティール王を獲得しました。

翌1983-84シーズンは48試合の出場に留まりましたが、ネッツはプレーオフ1回戦で前年王者のフィラデルフィア・76ersを破るという大金星を挙げます。リチャードソンはシリーズ最終戦で24得点6スティールを記録する活躍を見せました。

1984-85シーズンには、全82試合に出場し、キャリアハイとなる平均20.1得点、2.96スティールを記録。自身3度目のスティール王に輝き、カムバック賞を受賞、オールスターにも3年ぶりに復帰しました。

しかし、1985-86シーズン終了後、薬物検査で陽性反応を示し、3度目の薬物規定違反によりNBAから永久追放処分を受けます。1988年に処分は解除されたものの、NBAに復帰することは叶いませんでした。

NBAでの通算成績は、556試合に出場し、8,253得点、3,899アシスト、1,463スティール（平均14.8得点、7.0アシスト、2.63スティール）でした。キャリア平均2.63スティールは、アルヴィン・ロバートソンに次ぐ史上2位の記録です。

NBA追放後

NBAを追放された後、リチャードソンはUSBLやCBAなどの国内セミプロリーグでプレーしました。その後、1988年にヨーロッパに渡り、イタリアやフランスなどのプロリーグで現役を続けました。1990年にはFIBAサポルタ・カップで優勝し、得点王を獲得。1995年にはフランスのリーグ・ナショナル・バスケットボールでも優勝を経験しています。2002年に47歳で現役を引退しました。

コーチングキャリア

2004年、リチャードソンはCBAでヘッドコーチに就任。2008年、2009年にはチームをリーグ2連覇に導きました。その後、カナダのプロリーグNBLに移り、2012年、2013年と2年連続でリーグ優勝と年間最優秀コーチ賞を受賞しています。

人物とエピソード

リチャードソンは、自らが永久追放処分を受けたことについて、クリス・マリンがアルコール問題を抱えながら処分されなかったことを引き合いに出し、自身が黒人、マリンが白人であるために処遇に差が生じていると批判しました。

幼い頃に父親を亡くしたリチャードンにとって、モンタナ大学時代のコーチ、ジャッド・ヒースコートは父親代わりの存在でした。ヒースコートがミシガン州立大学のヘッドコーチに就任することを知った際には、涙ながらにモンタナ大学に留まるよう訴えたと言われています。

2000年、NBAエンターテインメントはリチャードソンの半生を追ったドキュメンタリー『Whatever Happened to Micheal Ray?』を公開しました。

2001年にはモンタナ大学スポーツ殿堂入りを果たしています。

CBAでヘッドコーチを務めていた2007年には、「ユダヤ人は世界中で嫌われているので狡猾だ」と発言し、物議を醸しました。この発言に対し、リーグから出場停止処分を受けましたが、一部からは彼の妻と娘がユダヤ人であることから、真の反ユダヤ主義者ではないという擁護の声も上がりました。

引退後は、ネッツ時代のチームメイトで親友のオーティス・バードソングとともに、ユース向けのバスケットボールクリニックを主催しています。

息子のアミール・リチャードソンはプロサッカー選手として活躍しており、2024年現在、フランスのスタッド・ランスに所属しています。なお、代表はアメリカではなく、母方のモロッコを選択しています。

マイケル・レイ・リチャードソンは、その才能と実績だけでなく、波乱万丈な人生を通して多くの人々に影響を与えた人物として記憶されるでしょう。

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