マイナロス (ギリシア神話)

古希ではマナイロス（Μαίναλος）、英語ではメイナラス（Maenalus）と呼ばれるこの人物は、ギリシア神話に登場する重要人物である。アルカディア地方を支配した伝説的な王リュカーオーンがもうけた50人の息子たちのうちの一人として語り継がれている。リュカーオーンの子孫たちはアルカディア各地に赴き、それぞれ都市を建設したと伝えられており、マイナロスもまたその一人であった。

マイナロスは、自身の名を冠した都市「マイナロス」をアルカディア地方に建設した創設者として知られる。古代の旅行家パウサニアースの記録によると、かつてこの都市はアルカディア地方の中で最も栄え、名高い都市であったという。彼の功績は、アルカディア地方の地理や歴史と深く結びついている。

しかし、マイナロスは単なる都市の建設者としてだけでなく、父や兄弟と共に犯した恐ろしい罪によっても知られている。神話によれば、リュカーオーンとその息子たちは傲慢で、神々を敬う心がなかった。アポロドーロスなどの記述によると、彼らは最高神ゼウスの全知を試すため、あるいはその威光を貶めるために、土地の少年を一人捕らえ、これを殺害した上でその肉を調理し、ゼウスへの供物として献上するという極めて冒涜的な行為を行ったという。この残虐な人肉供儀には、マイナロスも父リュカーオーンや他の多くの兄弟たちと共に積極的に加担したとされている。

神々の王ゼウスは、彼らの犯したこの非道極まりない行いを知ると、激しい怒りに燃えた。ゼウスは彼らの傲慢さと不敬、そして人倫に悖る行為を決して許さなかった。アポロドーロスによれば、ゼウスは怒りの雷をもって、リュカーオーンとその息子たちのほとんどを滅ぼしたという。リュカーオーンの50人の息子の中で、この神罰から逃れることができたのは、末子のニュクティーモスだけであったとされる。マイナロスもまた、この恐ろしい神罰によって命を落としたのである。このように、マイナロスは都市の建設者としての側面を持ちながらも、リュカーオーン家の一員として犯した罪により、神話においては破滅的な最期を迎えた人物として描かれている。

また、悲劇作家エウリーピデースの作品では、マイナロスは別の形で言及されている。彼の劇においては、マイナロスは有名な女狩人であるアタランテーの父であるとされている。アタランテーの出自については複数の伝承が存在するが、マイナロスを彼女の父とする説もその一つとして伝えられている。この伝承は、リュカーオーンの息子としてのマイナロスとは異なる系譜を示す可能性があり、彼の神話における位置づけに多様性をもたらしている。

マイナロスは、アルカディア王リュカーオーンの息子として、古代アルカディア地方における重要な都市マイナロスの創建者という功績を持つ一方で、父や兄弟と共に神を冒涜する人肉供儀を行い、その報いとしてゼウスに雷で滅ぼされた人物である。都市の建設者としての栄光と、不敬な罪による破滅という二つの側面を持ち合わせており、さらに別の伝承では女狩人アタランテーの父としても語られるなど、その短い記述の中に複数の異なる伝承が織り交ぜられている人物であると言える。

もう一度検索