マエディ・ビスナ

マエディ・ビスナ

マエディ・ビスナ（Maedi-Visna）は、主にヒツジやヤギに見られる慢性的な感染症で、レトロウイルス科の一部であるマエディ・ビスナウイルスによって引き起こされます。この病気は、国際獣疫事務局によって認定されたリストB疾病であり、日本の法律においても家畜伝染病防止法に基づく届出伝染病として分類されています。

感染経路と症状

マエディ・ビスナウイルスは、感染した動物の乳汁を介して経口的に感染しますが、呼吸器経由または胎内感染のケースも考えられています。この病気は遅発性ウイルス感染症の一種であり、成獣における発症率は約30%とされています。感染後、通常2年の潜伏期間を経て、元気を失い、呼吸困難を示すようになります。

特に脳脊髄炎の発症が見られる場合、症状は徐々に進行し、四肢の麻痺や跛行、さらには歩行困難といった状態に至ることがあり、最終的には衰弱による死に至ることもあります。また、乳腺に影響を及ぼすこともあり、乳房炎を引き起こすことがあります。

研究の歴史と識別

この感染症に関する初期の研究では、マエディの症状が呼吸器に関連し、ビスナの症状が脳に関係していることから、最初は異なるウイルスによる病気と考えられていました。その後の研究により、いずれも同じウイルスによって引き起こされるものであることが明らかになりました。

マエディ・ビスナウイルスを分離するためには、特定の細胞を培養する必要があります。この過程で、2〜3週間後に多核巨細胞を伴う細胞の変性効果が観察されることがあります。また、血清診断方法としては、寒天ゲル内沈降反応やELISA（酵素免疫測定）が利用されます。

治療法と予防

残念ながら、現在のところこの病気に対するワクチンは実用化されていません。そして、治療法も存在しないため、感染が確認された動物は淘汰されることが必須の対策とされています。このため、特に家畜を飼育する環境では、感染症の予防策が非常に重要となります。

参考文献と関連情報

マエディ・ビスナの理解を深めるためには、獣医学に関する資料が非常に役立ちます。特に次の文献が参考になります。

• - 獣医学大辞典編集委員会編『明解獣医学辞典』
• - 清水悠紀臣ほか『動物の感染症』
• - 見上彪監修『獣医感染症カラーアトラス 第2版』

また、動物衛生研究所や家畜疾病総合情報システムのウェブサイトも有益な情報を提供しています。過去の研究や最新の動向を知ることで、マエディ・ビスナに関する知識をより深めることができるでしょう。

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