マガモ

マガモ：広範囲に生息する身近なカモ

マガモ(Anas platyrhynchos)は、カモ目カモ科に属する鳥類で、北半球の冷帯から温帯地域に広く分布しています。繁殖地は北方地域に集中し、冬期にはより温暖な南方に渡り、越冬します。

生息域と渡り

日本では、亜種マガモが冬鳥として全国的に渡来し、北海道から南西諸島まで広く見られます。北海道や本州中部山間部では少数が繁殖していますが、本州中部以南での繁殖記録はアヒルやアイガモの可能性が高いとされています。実際、マガモとアヒル、アイガモは生物学的には同種であり、見分けが困難な場合もあります。

形態

マガモの体長は50～65cm、翼開長は75～100cmです。繁殖期のオスは、黄色のくちばし、緑色の頭部、白い首輪、灰白色と黒褐色の胴体という、非常に鮮やかな体色をしています。一方、メスはくちばしが橙と黒で、全身が黒褐色の羽毛に黄褐色の縁取りがある、地味な体色です。非繁殖期のオスはメスによく似た羽色（エクリプス）になりますが、くちばしの黄色が残るため識別可能です。幼鳥はくちばしに褐色みがあります。

生態と繁殖

非繁殖期には湖沼、河川、海岸などに生息し、群れを形成して生活します。10月末から12月頃に越冬地でつがいを形成し、春になると繁殖地へと移動します。繁殖期には湖沼、池、湿地周辺の草地などに生息し、水辺近くの草を浅い皿状に集めて巣を作ります。1～13個(平均11個)の白い卵を産み、抱卵と育雛はメスのみが行います。卵は約1ヶ月で孵化し、雛は約42～60日で飛べるようになります。

食性

マガモは植物食が中心の雑食性です。水草の葉や茎、植物の種子、貝類などを食べます。水面を泳ぎますが潜水はせず、首を水中に入れたり、逆立ちしたりして採餌する姿がよく見られます。

亜種

マガモにはいくつかの亜種が知られています。代表的なものとして、グリーンランドマガモ、マダラマガモ、メキシコマガモ、フロリダマガモ、ハワイマガモ、レイサンマガモなどがあります。ハワイマガモとレイサンマガモについては、独立種とする説も有力です。

人間との関係

狩猟

マガモは古くから食用として狩猟されてきました。日本では鳥獣保護法で狩猟鳥に指定されており、その肉は質、量ともに高く評価されています。臭みが少ない点も大きな特徴です。狩猟対象としてオスは「アオクビ」と呼ばれることもあります。

家禽

マガモは古くから家禽としても飼育されており、アヒルの祖先とされています。アヒルとマガモの交配によってアイガモが生まれたとされています。人になつきやすく、都市部の池などで餌付けされることもあります。近年はアイガモ農法の普及に伴い、野生種との交雑が進み、遺伝子汚染が懸念されています。

羽の色

マガモのオスの緑色の頭部は、古くから注目を集めており、「鴨の羽色」「ダックブルー」などの色名があります。また、中国と北朝鮮の国境である鴨緑江の名前は、その水の色がマガモのオスの色に似ていることに由来するという説があります。

保全状況

[国際自然保護連合]のレッドリストでは軽度懸念(LC)に指定されています。しかし、日本では栃木県で準絶滅危惧種(NT)、長野県で地域個体群(LP)としてレッドリストに掲載されている地域もあります。

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