マキシム・シャピロ

マキシム・シャピロ（Максим Шапиро, 1885年1月1日 - 1958年7月19日）は、ロシア帝国出身のピアニスト、ピアノ教師です。彼は、激動の時代を生き、その音楽的才能と教育者としての情熱で、日本とアメリカの音楽界に大きな足跡を残しました。

生い立ちと教育

マキシム・シャピロは、ロシアのサラトフで生まれ、モスクワで育ちました。幼少期から音楽の才能を発揮し、モスクワ音楽院でニコライ・メトネルにピアノを師事しました。メトネルは、ロシアを代表する作曲家、ピアニストであり、シャピロの音楽的基礎を築いた重要な人物です。

亡命と日本での活動

1917年のロシア革命後、シャピロはドイツに亡命しました。ベルリンではピアノ教師として活動し、後に従兄弟コンスタンチン・シャピロの妻となるリディヤ・チェルネツカヤも指導しました。その後、ハルビンを経て、1927年にコンスタンチンと共に日本に移住しました。日本での生活は、彼の音楽家としてのキャリアに新たな展開をもたらしました。

1930年には、リディア・シャピロとともに映画『藤原義江のふるさと』にピアノ伴奏者として出演し、その演奏は多くの観客を魅了しました。1933年には、大阪音楽学校（現在の大阪音楽大学）の特別専門科ピアノ科教授に就任し、後進の指導に尽力しました。属澄江、甲斐美和子、小園登史子など、多くの優秀なピアニストを育成し、日本の音楽教育に貢献しました。

アメリカでの最期

1939年、シャピロは教え子の一人である甲斐美和子とともにアメリカ合衆国に渡りました。アメリカでも演奏活動や教育活動を続けましたが、1958年にカーメル・バッハ・フェスティバルに出演中、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲ピアノ協奏曲第26番『戴冠式』の演奏中に心臓発作で倒れ、病院搬送中に亡くなりました。彼の遺灰は、生前の希望により、愛した日本に撒かれました。

親族

マキシム・シャピロの従兄弟には、チェリストのコンスタンチン・シャピロがいます。コンスタンチンの四男は、アメリカの弁護士アイザック・シャピロです。アイザックは1931年に東京で生まれ、ハルビンで育ち、横浜のセント・ジョセフ・インターナショナル・カレッジで学んだ後、1946年にアメリカに渡りました。彼は、日本での経験をもとに『昇った太陽・日本―日米転換期論』や『Edokko: Growing Up A Foreigner In Wartime Japan』などの著書を執筆し、日米関係の歴史研究に貢献しました。

参考文献

マキシム・シャピロの研究は、以下の文献を通じてより深く理解することができます。

『音楽年鑑』 昭和16年度、大日本音楽協会、1941年
Kehler, George (1982). The piano in concert. 2. Metuchen, New Jersey: The Scarecrow Press.
Shapiro, Isaac (2009). Edokko: Growing Up a Foreigner in Wartime Japan. New York: iUniverse.
Thomson, Virgil (2014). “Maxim Schapiro”. In Page, Tim. Music Chronicles 1940-1954. Library of America Series. 258. New York: Library of America.
* 萩谷由喜子『クロイツァーの肖像 日本の音楽界を育てたピアニスト』ヤマハミュージックメディア、2016年

マキシム・シャピロは、その音楽的才能と教育者としての情熱で、多くの人々に影響を与え、彼の遺産は今もなお語り継がれています。

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