藤原義江のふるさと

映画『藤原義江のふるさと』について

『藤原義江のふるさと』は、1930年（昭和5年）に公開された溝口健二監督による日本の長編劇映画です。この作品は、「日活第1回トーキー映画」と大々的に宣伝されましたが、実際には完全なトーキーではなく、サイレント部分が混在するパートトーキー作品でした。公開時には『ふるさと』というタイトルでも知られ、当時のポスターや後年の文献では、このタイトルで紹介されることもあります。

制作の背景

1929年（昭和4年）に大将軍から太秦へ移転した日活太秦撮影所では、『朝日は輝く』や『東京行進曲』、『都会交響楽』といった、サイレントの現代劇や傾向映画が制作されていました。その中で、溝口健二監督は、関東大震災以前に浅草オペラのスターとして活躍した藤原義江を主演に迎え、この作品を制作しました。藤原義江にとって、本作が映画初出演であり、初主演作品となりました。

技術的な挑戦と結果

日活太秦撮影所は、トーキー映画第一作の製作にあたり、皆川芳造が開発したミナ・トーキーシステムを採用しました。発声映画社と提携して制作されたこの映画は、「吾等のテナー」と称された藤原義江の歌声を映画館に響かせることを最大の目的としていました。しかし、当時の技術的な問題から、音声には多くの雑音が混入し、結果として本作は失敗作と評価されることになりました。1930年3月14日、東京・浅草公園六区の富士館を筆頭に全国で公開されました。

作品の現状

現在、上映用のプリントは東京国立近代美術館フィルムセンターが所蔵していますが、現存するプリントの上映時間は86分と、10巻ものとしては短いです。2006年（平成18年）に同センターが開催した「没後50年 溝口健二再発見」では、フィルムの回転数を調整し、1秒21コマの速度で上映されました。

スタッフ

監督: 溝口健二
原作: 森岩雄
脚色: 如月敏
演出台本: 畑本秋一、小林正
撮影: 横田達之、峰尾芳男
補助: 中山良雄
音響効果: 成生利男、浦島義勝
トーキー技術: 峰尾芳男
ピアノ: マキシム・シャピロ、前田璣
伴奏指揮: 田中豊明
装置: 榎本寅蔵、北猛夫
スクリプター: 坂根田鶴子、小林勝
普通写真: 青山虎雄
タイトル: 小栗美二
助監督: 安積幸二
製作: 日活太秦撮影所、発声映画社
上映時間: 107分（10巻 / 2,933メートル） - 現存86分
フォーマット: 白黒映画 - スタンダードサイズ（1.33:1） - トーキー（パートトーキー）

キャスト

藤原義江 - 藤村義夫
夏川静江 - その妻・あや子
小杉勇 - 藤村の友人・樋口
土井平太郎 - マネージャー・服部文三
村田宏寿 - 佐藤操
田村邦男 - ボーイ三吉
浜口富士子 - 大村夏枝
入江たか子 - 女工
津守精一 - 院長
北原夏江 - 看護婦
佐久間妙子 - 貴婦人
小西節子 - 船中の女
津島ルイ子 - 船中の女
大野求 - アナウンサー
伊藤和夫 - 書記
マキシム・シャピロ - ピアノ伴奏
リディア・シャピロ - ピアノ伴奏

初回興行

浅草・富士館、神田・神田日活館、上野・上野日活館、麻布・麻布日活館で公開されました。

外部リンク

藤原義江のふるさと - 日本映画データベース
藤原義江のふるさと - allcinema
藤原義江のふるさと - IMDb（英語）

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