マクシム・ムルヴィツァ

マクシム・ムルヴィツァ（Maksim Mrvica, 1975年 5月3日 - ）は、クロアチアのダルマチア地方シベニク出身のピアニストです。日本では通称「マキシム」として知られています。モデルのような端正な容姿と長身、そしてピアニストらしからぬファッションセンスから、「鍵盤のプリンス」という愛称で親しまれています。彼はクラシック音楽をベースに、クロスオーバーというジャンルで独自の音楽性を展開しており、世界中で多くのファンを魅了しています。

生い立ちと音楽への道

マクシムは6歳でピアノを始め、9歳で音楽学校に入学し、マリア・シェクソの指導のもとでピアノの腕を磨きました。12歳で初めてオーケストラと共演し、その才能を開花させました。しかし、1990年代初頭にはクロアチア紛争が勃発し、彼は戦火を避けて地下室でピアノの練習を続けるという困難な時期を過ごしました。

1993年、ザグレブで開催されたコンクールで優勝し、ザグレブ音楽院に進学。その後、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの弟子であるヴラジミール・クルパン教授に5年間師事しました。さらに、ハンガリーのリスト音楽院に進み、在学中にニコライ・ルービンシュタイン国際ピアノコンクールで優勝するなど、数々の輝かしい実績を重ねました。

2000年にはパリに移り、イゴール・ラスコに師事。2001年にはポントワーズ・ピアノコンクールで優勝を果たしました。

世界的な成功

2003年、EMIと契約し、アルバム『ピアノプレイヤー』をリリース。このアルバムは、韓国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、中国でゴールドディスク、台湾とクロアチアでプラチナディスク、香港でダブルプラチナディスクを獲得し、HMVインターナショナルでは12週連続1位という驚異的な記録を打ち立てました。また、同アルバムに収録されているグリーグの『ピアノ協奏曲イ短調』は、東芝の携帯電話のCMにも使用され、彼の名前は一躍広く知られるようになりました。

その後、2004年にはアジアツアーを敢行し、アルバム『ヴァリエーションズ』をリリース。2005年には、ユーリ・シモノフ指揮のモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団とラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』を共演し、クラシック音楽の分野でもその実力を示しました。同年にはアルバム『ニューワールド』もリリース。

2006年には、アルバム『ELECTRIK』（エレクトリック）と『チャルダッシュ』を発表し、クロスオーバー音楽の分野での人気を不動のものとしました。

音楽活動と人物像

マクシムはロンドンを拠点に活動しており、レコーディングも多くをロンドンで行っています。ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団との共演も数多く、世界各地でツアーを行っています。また、母国クロアチアでも定期的にコンサートを開催し、地元ファンを大切にしています。

彼は「10年の間にきみは変わった」と親友に言われたことを残念に思っているとインタビューで語っており、常に変化を恐れず、音楽への情熱を持ち続けていることが伺えます。

『ピアノプレイヤー』『ヴァリエーションズ』『ニューワールド』といったアルバムは、いずれもクロスオーバー音楽のジャンルに分類されますが、マクシムは「クロスオーバーだけのピアニスト」という批判に対して、積極的にクラシック音楽も演奏することで、その実力を証明しています。

関連する人物と作品

マクシムの楽曲は、フィギュアスケートのプログラムにも数多く使用されています。特に、

イリーナ・スルツカヤ選手は、2005-06年シーズンにショートプログラムでマクシムの編曲によるフランツ・リストの『死の舞踏』を使用し、トリノオリンピックでも使用されたことで、日本でマクシムの知名度が一気に高まりました。また、2004-05年シーズンにはフリースケーティングで『クロアチアン・ラプソディ』と『ワンダーランド』を使用しました。
テレビ朝日のフィギュアスケートのテーマ曲には、マクシムの『ワンダーランド』が使用されています。
織田信成選手も、2009-10年シーズンにショートプログラムでスルツカヤ選手と同じく『死の舞踏』を使用しました。
ザラ・ヘッケン選手は、2009-10年シーズン及びバンクーバーオリンピックのフリースケーティングで、『クロアチアン・ラプソディ』、『ワンダーランド』に加え、『リー・ルーズのテーマ』を使用しました。
羽生結弦選手は、2011-2012年シーズンのショートプログラムに、マクシムの演奏によるアレクサンドル・スクリャービンの『練習曲第12番嬰ニ短調「悲愴」』を使用しました。
オレクシイ・ビチェンコ選手は、2013-2014シーズンの一部と2014-2015シーズンのフリープログラムにマクシムの『ノストラダムス』を使用しました。
* 梁懿選手は、2016-17年シーズンにショートプログラムの音楽にマクシムの『ハナの瞳』を使用しました。

これらの使用例からも、マクシムの音楽が幅広い層に受け入れられていることがわかります。また、映画『栄光への脱出』のテーマ曲をリメイクするなど、様々なジャンルに挑戦し、その音楽性をさらに広げています。

まとめ

マクシム・ムルヴィツァは、その音楽的な才能と魅力的なパーソナリティで、クラシック音楽とクロスオーバー音楽の架け橋となる存在です。彼の演奏は、多くの人々に感動を与え、これからも世界中で愛され続けるでしょう。

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