マクタル書

マクタル書の概要

マクタル書、またはマクタルの書（ペルシア語: maqtal nāma）は、イスラーム教シーア派におけるイマーム・フサインの殺害に関する歴史的な事件を扱った書物の総称です。これらの書物は8世紀から9世紀初頭にかけて、特にシーア派の信徒たちによって多く出版され、今日でも信仰の中心的な要素とされています。

歴史的背景

8世紀から9世紀のイスラーム世界では、特に重要なムスリムの死について描かれた解説本が流行しました。これらの作品は、特にフサインの殺害に関わる事件に焦点を当て、その重要性を強調するために書かれました。このような本が「マクタル」と広義に呼ばれるようになり、後の時代においても重要な資料として位置づけられています。

フサインのマクタル

ヒジュラ暦61年、ムハッラム月10日（西暦680年10月10日）に、イマーム・フサインおよびその家族がカルバラーの地で壮絶な虐殺に遭ったことは、シーア派の信仰の根幹を成しています。この出来事に焦点を当てたマクタル書は、8世紀に初めて書かれ、その後も多くの作家によって繰り返し取り上げられました。狭義のマクタルは、主にフサインのマクタルを指します。

有名なフサインのマクタル

以下は、よく知られているフサインのマクタルのリストです。

• - Maqtal al-Husayn - アブー・ミフナフ（d. 157 AH / 774 CE）
• - Maqtal al-Husayn - ムハンマド・ブン・サアド・ブン・マニー（d. 230 AH / 845 CE）
• - Maqtal al-Husayn - アフマド・ブン・ヤフヤー・バラーズリー（d. 283 AH / 892 CE）
• - Maqtal al-Husayn - アブー・ハニーファ・ディーナワリー
• - Maqtal al-Husayn - アフマド・ブン・アーサム（d. 314AH / 926-927 CE）

伝世しなかった作品

一方で、書かれたものの現代に伝わっていないフサインのマクタルも数多く存在します。そのいくつかは、著名な作家たちや歴史家に言及されており、以下のようなリストが挙げられます。

• - Maqtal al-Husayn - ワーキディー（d. 207 or 209 AH）
• - Maqtal al-Husayn - アブー・ウバイダ・ムアンマル・ブン・ムサンナー（d. 209 AH）
• - Maqtal al-Husayn - ナースィル・ブン・ムザハム・マンカリー（d. 212 AH）
• - Maqtal al-Husayn - アブー・ウバイド・カースィム・ブン・サーリム・ヒラウィー（d. 224 AH）
• - Maqtal al-Husayn - アブドゥッラー・ブン・ムハンマド

まとめ

マクタルは、イスラーム教の歴史やシーア派の信仰において非常に重要な役割を果たしている文献群です。こうした書物を通じて、イマーム・フサインの教えやその歴史的事件が後世に伝えられ、信徒たちの心に深く刻まれています。現在も多数の翻訳や研究が行われており、学問的にも重要なテーマとなっています。

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