マクベス (1908年の映画)

『マクベス』（英語: Macbeth）は、1908年にヴァイタグラフ・カンパニー・オブ・アメリカによって制作・配給されたアメリカのサイレント短編映画です。この作品は、ウィリアム・シェイクスピアの有名な悲劇『マクベス』を映画化した最初期の作品の一つとされています。

制作背景と概要

ヴァイタグラフ社は当時、数多くの短編映画を量産しており、『マクベス』もその一つとして制作されました。シェイクスピアの戯曲を基にしたこの映画は、1908年4月19日にアメリカで公開されました。この映画化は、舞台劇とは異なる視覚的な表現を試み、初期の映画技術の中で物語をどのように語ることができるかを探求するものでした。

日本での公開

日本では、日活の前身である横田商会が配給を担当し、1910年5月15日に東京の浅草公園六区にあった富士館で公開されました。この際、『医師と武士の交際』という同時上映作品も上映されました。当時の映画館での上映は、一つの演目だけでなく、複数の短編映画を組み合わせることが一般的でした。

現存状況

残念ながら、この初期の『マクベス』のオリジナルネガや上映用プリントは、現在では散逸してしまっており、現存は確認されていません。初期の映画フィルムは、保存状態が悪かったり、可燃性素材で作られていたために消失してしまったものが多く、映画史の初期作品を研究する上で大きな課題となっています。

スタッフとキャスト

映画の監督はJ・スチュアート・ブラックトンが務めました。彼は初期の映画監督として、特殊効果のパイオニアとしても知られています。原作は当然ながらウィリアム・シェイクスピアです。美術はフランク・ベンソンが担当しました。

上映時間は約10分で、1巻もの、835フィートのフィルムでした。フォーマットは白黒映画で、スタンダードサイズ（1.37:1）のサイレント映画です。当時、映画はまだ実験的な段階であり、技術的な制約の中で、いかに物語を伝えるかが重要でした。

出演者は以下の通りです。

ウィリアム・V・レイナス：マクベス役
ポール・パンザー：マクダフ役
チャールズ・ケント：ダンカン1世役
ルイーズ・カーヴァー：マクベス夫人役
エドゥアール・ド・マックス：役柄不明
フローレンス・ローレンス：宴会の客役
* フローレンス・ターナー：宴会の客役

このキャストからもわかるように、当時の映画は舞台俳優が起用されることが多く、その演技力によって物語を表現していました。

関連事項

この映画は、1910年の日本公開映画の一つとして、初期の映画文化が日本に紹介される上で重要な役割を果たしました。また、ヴァイタグラフ・スタジオは、多くの初期映画を制作したことで知られています。監督のJ・スチュアート・ブラックトンや、美術のフランク・ベンソンは、初期映画界で活躍した人物として知られています。

まとめ

1908年版の『マクベス』は、シェイクスピアの戯曲を映画化した最初期の例であり、映画史における重要な作品の一つです。残念ながら現存するフィルムは確認されていませんが、その存在は初期の映画技術や、演劇作品が映画にどのように取り込まれていったかを理解する上で非常に重要です。この映画は、初期の映画が舞台演劇から影響を受けつつ、独自の表現を模索していた時代の証拠と言えるでしょう。

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