マクラーレン・MCL32

マクラーレンMCL32：2017年シーズンの苦闘と進化

2017年、マクラーレンは新たな挑戦を掲げ、F1世界選手権にMCL32を投入しました。これは、長年使用された「MP4」から「MCL」へとシャシー名称が変更された最初のマシンであり、チームにとって大きな転換期となりました。ロン・デニスCEO解任という大きな変化を経て、チームは新たな体制でシーズンに臨んだのです。

2月24日、発表されたMCL32は、シャークフィン、小型化されたサイドポッドとエアボックスが特徴的な、空力性能にこだわったマシンでした。パパイヤオレンジとブラックを基調としたカラーリングも印象的で、燃料メーカーはBP/カストロールに変更されました。ホンダが提供するパワーユニット（PU）は、低重心化と軽量化によるパワー向上を目指した設計でしたが、シーズンを通してチームを苦しめることになります。

ドライバーは、ベテランのフェルナンド・アロンソと、ジェンソン・バトンに代わり昇格したストフェル・バンドーン。アロンソはかねてより参戦を希望していたインディ500への出場のため、モナコGPをバトンに譲るという異例の形も取られました。

プレシーズンテストではPUとマシントラブルに悩まされ、十分な走行距離を確保できず、シーズンへの不安が募りました。開幕後も、マシントラブルによるリタイアが相次ぎ、チームは序盤から苦戦を強いられます。アロンソは序盤２戦で入賞圏を走行する場面もありましたが、いずれもトラブルでそのチャンスを逃すこととなりました。

PUの問題は特に深刻で、予選で好成績を収めても、決勝ではトラブルに見舞われポイントを獲得できないケースが続出しました。開幕から7戦ノーポイントというチームワースト記録は、マシンの潜在能力を思うと悔やまれる結果となりました。アゼルバイジャンGPでアロンソが9位に入賞し、ようやく初ポイントを獲得しますが、その喜びも束の間、その後もトラブルは続き、チームは低迷を続けました。

シーズン前半は、PUのトラブルに加え、サスペンションの不調といったシャシー関連のトラブルも発生しました。予選で好位置を獲得しても、PU交換によるグリッド降格ペナルティや、リタイアによってその成果を無駄にするレースが続きました。しかし、ハンガリーグランプリではアロンソがファステストラップを記録し、チームは初のダブル入賞を果たします。コンストラクターズランキング最下位も脱出し、シーズン前半戦を終えました。

トラブルは、前半戦のダブル入賞をきっかけに改善の兆しを見せ始めましたが、ホンダPUのパフォーマンスへの不満は解消されず、マクラーレンとホンダの関係は悪化の一途を辿っていました。そして、シンガポールGPで2018年からのルノーPU供給契約を発表。ホンダとのパートナーシップに終止符を打ちました。

ホンダとの提携解消後も、マシントラブルは完全に解消されたわけではありませんでした。アメリカGPではバンドーンがPUトラブルで最後尾スタートを余儀なくされ、アロンソも入賞圏内を走行中にPUトラブルでリタイア。しかし、メキシコGPとブラジルGPでアロンソが入賞を果たし、シーズン最終戦のアブダビGPでも9位に入賞。3年間続いたマクラーレン・ホンダのパートナーシップに幕を閉じました。

MCL32のスペックは、カーボンファイバー製のモノコック構造、前後独立懸架サスペンション、そしてホンダRA617Hパワーユニットなど、当時のF1レギュレーションに準拠したものでした。ホンダ製パワーユニットの詳細は、1600cc V型6気筒、24バルブ、最高回転数15,000rpm、ハイブリッドシステム搭載など、技術的な詳細が盛り込まれています。ブレーキシステムには曙ブレーキ工業、タイヤはピレリ、ホイールはエンケイといった、日本のメーカーも多数関与していました。

2017年シーズン、MCL32はトラブルに見舞われながらも、チームの努力とドライバーの粘りによって、幾つかの明るいスポットも残しました。この経験は、後のマクラーレンの進化に繋がる貴重な財産となったことは間違いありません。

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