マクラーレン・MP4-12

マクラーレンMP4-12：復活への序章

1997年のF1世界選手権でマクラーレンチームが投入したMP4-12は、チームの歴史において重要な転換期を象徴するマシンです。長きに渡り使用されてきた「MP4/」というモデルネームは、この年から「MP4-」へと変更。これは単なる表記変更ではなく、チームの新たな決意を示すものでした。

チームは、長年のタイトルスポンサーであったマールボロとの契約を終了。新たにインペリアル・タバコグループのウエストをスポンサーに迎え、マシンカラーリングも、それまでの赤と白から黒と銀を基調としたものへと一新しました。このイメージチェンジを印象付けるため、ウィンターテストではニュージーランドのナショナルカラーであるパパイヤオレンジに塗装されたマシンが公開され、大きな話題となりました。

ドライバーは前年と同じく、ミカ・ハッキネンとデビッド・クルサードの強力なコンビが続投。彼らはMP4-12と共に、シーズンを通して激戦を繰り広げます。

開発：徹底的な改善と新たな技術

MP4-12の開発においては、前モデルMP4/11で課題となったハンドリングバランスの改善が最重要課題でした。徹底的な分析と改良が重ねられ、フロントサスペンションのカーボン化と流線型デザインを採用することでエアロダイナミクスの向上を図りました。さらに、エレクトリック・デファレンシャルやインテリジェント・ドライブ・バイ・ワイヤシステムの熟成にも注力。パワーユニットであるメルセデスエンジンは、高回転、ハイパワーをコンセプトに開発されました。

シーズン中盤からは、ウィリアムズから移籍した名設計者エイドリアン・ニューウェイも開発に合流。彼の経験と知識がMP4-12の進化に大きく貢献しました。

シーズン：苦闘と勝利、そして復活への希望

開幕戦オーストラリアGPでは、クルサードが劇的な逆転優勝。1993年以来の勝利をチームにもたらしました。その後は安定したポイント獲得を続けながらも、リタイアも経験するなど、トップ争いへ食い込むには至りませんでした。

第6戦スペインGPからは、800馬力を誇るメルセデス・ベンツFスペックエンジンが投入されました。高速サーキットでは、大きなリアウィングを装着しながらも、新エンジンのパワーにより中盤戦からは表彰台を獲得する機会が増加しました。

しかし、シーズンを通してエンジンの信頼性の問題が大きな課題となりました。ハッキネンのイギリスGPでのエンジンブローや、オーストリアGP、ルクセンブルクGPでの連続リタイアは、優勝を逃す大きな要因となりました。ルクセンブルクGPではハッキネンが初のポールポジションを獲得したものの、レース中にエンジンブローでリタイアという悔しい結果に終わりました。クルサードもまた、ルクセンブルクGPで同じようにエンジンブローでリタイアを喫しました。

それでもチームは諦めませんでした。イタリアGPではクルサードがベネトンのアレジを逆転し優勝。ハッキネンも自身初のファステストラップを記録しました。そして最終戦ヨーロッパGPでは、ハッキネンが初優勝。クルサードも2位に入り、ワンツーフィニッシュを達成しました。この勝利は、チームの復活への大きな希望となりました。

スペック

MP4-12の技術的な詳細については、以下の通りです。

シャーシ:
シャーシ名: MP4-12
モノコック: カーボンファイバー・アルミハニカムコンポジット
主要部品サプライヤー: AP([ブレーキ]]キャリパー、クラッチ), カーボンインダストリー(ブレーキディスク・パッド), エンケイ], [グッドイヤー]
ギアボックス: 6速セミオートマチック

エンジン:
エンジン名: メルセデス・ベンツFO110E/110F
タイプ: V型10気筒
排気量: 3000cc
エンジンマネージメントシステム: TAG2000エレクトロニックシステム

成績

ドライバーズランキングでは、クルサードが3位、ハッキネンが6位に入賞。MP4-12は、チームの復活への足掛かりとなる、重要な一歩を踏み出したシーズンとなりました。

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