マクロライド

マクロライドについて

マクロライドとは、12以上の原子から成る大環状ラクトン構造を持つ有機化合物を指します。この名称は「マクロ」と「ライド」という2つの言葉から成り立っており、その特異な構造が語源である背景を持ちます。マクロライドは有用な天然物化合物の一種であり、特に医療分野において注目されているのがマクロライド系抗生物質です。

マクロライド系抗生物質の発見と歴史

1950年、がん治療や感染症に効果を発揮する物質が放線菌から発見されました。この物質が「ピクロマイシン」と呼ばれ、マクロライド系抗生物質の先駆けとされています。1957年、ロバート・バーンズ・ウッドワードはこの大環状ラクトンをアグリコンとする一連の配糖体にマクロライドという名称を与えました。彼はエリスロマイシンの全合成に関する研究を通じて、マクロライドの立体特異的な合成法を確立した業績でも評価されています。

マクロライド系抗生物質の種類

マクロライド系抗生物質には、さまざまな種類が存在し、それぞれ異なる用途や効能を持っています。以下に代表的なマクロライド系抗生物質を紹介します。

• - エリスロマイシン: 細菌感染の治療に広く用いられる抗生物質です。
• - クラリスロマイシン: エリスロマイシンの誘導体で、より効果的であることが特徴です。
• - アジスロマイシン: 構造的にはエリスロマイシンに似ていますが、効果が持続しやすい特徴があります。
• - オレアンドマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン: これらもマクロライド系抗生物質として、特定の細菌感染に対して使用されます。
• - アセチルスピラマイシン: 通常は妊婦や小児の治療に使用されることが多いです。
• - ミデカマイシン: 一部の細菌感染に効果があります。
• - フィダキソマイシン: クロストリジウム属の感染症に特化した抗生物質です。

その他のマクロライド系物質

マクロライドの世界は抗生物質だけにとどまらず、他の生理活性を持つ天然物も多く存在します。したがって、医療分野では様々な用途に対応するマクロライドが使用されています。たとえば、以下のようなものがあります。

• - タクロリムス: 免疫抑制薬として用いられ、臓器移植後の拒絶反応を抑制するために使用されます。
• - スピラマイシン: 抗原虫薬として知られ、特にトキソプラズマ治療に効果があります。
• - イベルメクチン: 抗寄生虫薬として、オンコセルカやフィラリア、ヒゼンダニなどの感染症によく用いられています。

これらの事実から、マクロライドは医療において多岐にわたる効果を発揮する重要な化合物群であることがわかります。今後も新たなマクロライド類の発見や、それに基づいた治療法の進化が期待されることでしょう。

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