マグヌス・エーレンドソン

聖マグヌス：オークニー諸島の守護聖人

聖マグヌス（Saint Magnus）は、11世紀に生まれたオークニー伯マグヌス・エーレンドソン（Earl Magnus Erlendsson of Orkney）として知られています。1075年頃に生まれ、1115年に没した彼は、1108年から1115年までオークニー伯の地位にありました。彼の生涯は「マグヌス・サガ」や「レジェンダ・デ・サンクト・マグノ」といったサガに記録され、後世に語り継がれています。また、「マグナス・エーレンドスン」とも呼ばれています。

生い立ちと信仰

マグヌスの祖父はオークニー伯トールフィンで、彼にはエーレンドとポールという双子の息子がいました。マグヌスの父はエーレンドです。母インギビオルグの父はフィン・アルネッソンといい、ノルウェー王オーラヴ2世とハーラル2世の血を引いていました。

マグヌスは父エーレンド・トールフィンソンの息子として生まれました。当初、父エーレンドはノルウェー王マグヌス3世の臣下でしたが、1098年にマグヌス3世はエーレンドとポールの兄弟からオークニーの所有権を剥奪しました。その後、ポールの息子ホーコン・ポールソンがノルウェー王子シグルドの摂政となり、1105年にオークニー伯となりました。

「オークニーのサガ」によれば、マグヌスは敬虔で柔和な人物として知られていました。ヴァイキングが荒らすアングルシー島での戦闘を信仰上の理由から拒否したため、ノース人から経歴を抹消されてしまいます。その後、スコットランド王国へ亡命を余儀なくされますが、1105年に帰還し、従兄弟ホーコンから継承権を取り戻しました。しかし、単独での統治はうまくいかず、エイステン2世王の助けを借りて、1114年までホーコンとオークニーを共同統治することになります。

悲劇的な最期

共同統治が崩壊すると、マグヌスとホーコンは武力衝突を開始します。和平交渉のため、両者はメインランド島で会談することになりました。しかし、ホーコンは約束を破り、マグヌスが2隻の船でエギルセー島に到着したのに対し、8隻の船で現れます。1115年4月16日、マグヌスは捕らえられ、亡命か幽閉かの選択を迫られました。しかし、オークニー諸島の族長による評議会は、どちらかの伯爵の死を要求しました。ホーコンの使者オフェイグがマグヌスの処刑を拒否したため、怒ったホーコンは料理人のリフォルフに命じ、マグヌスの首を斧で切り落とさせました。マグヌスは処刑される際、執行者たちの魂のために祈ったと伝えられています。彼の遺体は処刑された場所に埋葬され、その墓の周囲は奇跡的に緑地になったという伝説が残っています。

その後、マグヌスの母トーラは、息子の遺体を教会に埋葬したいとホーコンに願い出ました。ホーコンはこれを許可し、マグヌスはバーセーのキリスト教会に埋葬されました。教会では、数々の奇跡的な出来事と癒しが報告されるようになります。オークニー司教ウィリアムが噂を否定しようとしたところ、たちまち盲目となりましたが、マグヌスの墓前で祈りを捧げたところ、視力を回復したと伝えられています。

聖マグヌス大聖堂

マグヌスの甥ログンヴァルドはオークニー伯位を主張し、父コルの助言を得て、叔父マグヌスの記念としてカークウォールに石造の教会を寄進することを島民に約束しました。これが聖マグヌス大聖堂です。1137年に建設が開始された大聖堂は、マグヌスの遺骨を納める場所となりました。1917年には、円柱の中の隠されたくぼみから、損傷した頭蓋骨を含む遺骨が発見され、聖マグヌスの遺骨であるとされています。

聖マグヌスの足跡

フェロー諸島では、エーレンドル司教の時代である13世紀に聖マグヌス大聖堂が建てられました。この教会でも聖マグヌスが祀られており、1905年には遺骨が発見されています。カークユボルはフェロー諸島で最も重要な史跡の一つであり、世界遺産登録が期待されています。ヨーロッパには、聖マグヌスに捧げられた教会が21箇所存在します。

聖マグヌスの生涯は、信仰と平和を重んじた高潔な人物として、今もなお多くの人々に感銘を与え続けています。

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