マグ・トゥレドの戦い

マグ・トゥレドの戦い：アイルランド神話の二つの戦い

『マグ・トゥレドの戦い』（古アイルランド語: Cath Maige Tuired）は、アイルランド神話に登場する重要な物語群です。この物語は、アイルランドの支配権を巡り、ダヌ神族（トゥアサ・ジェー・ダナン）と先住民の間で繰り広げられた二つの大きな戦いを描いています。

語源について

「マグ・トゥレド」という地名は、「嘆きの平野」を意味すると一般的に解釈されています。古アイルランド語の「mag」は「平地」を意味し、「tuired」は「嘆き」を意味するとされています。

第一次マグ・トゥレドの戦い

第一次マグ・トゥレドの戦いは、ダヌ神族がどのようにしてフィル・ヴォルグからアイルランドの地を奪い、定住するに至ったのかを描いています。

物語は、ネヴェズの子らがフォモール族の圧迫を逃れてギリシアへ旅立つ場面から始まります。その後、ネヴェズの子孫であるフィル・ヴォルグがアイルランドに帰還し、30年間占領します。そこに、同じくネヴェズの子孫であるダヌ神族が到来します。

ヌアザ王に率いられたダヌ神族は、北の島々からアイルランドに上陸し、フィル・ヴォルグとの交渉に臨みます。しかし、両者は交渉決裂し、戦争へと突入します。激戦の末、ダヌ神族が勝利を収めますが、ヌアザは戦いで片腕を失ってしまいます。フィル・ヴォルグは最終的にコナハト地方を与えられ、ダヌ神族との間に和平が結ばれます。

片腕を失ったヌアザは、医神ディアン・ケヒトによって銀の義腕を与えられますが、ブリギッドの進言により、一時的に王位をブレスに譲ることになります。しかし、ブレスが失脚した後、ヌアザは再び王位に復帰します。

第一次マグ・トゥレドの戦いは、「コングのマグ・トゥレドの戦い」または「南マグ・トゥレドの戦い」とも呼ばれます。

第二次マグ・トゥレドの戦い

第二次マグ・トゥレドの戦いは、「マグ・トゥレド最後の戦い」または「北マグ・トゥレドの戦い」とも呼ばれます。この戦いは、ダヌ神族がフォモール族の圧力を受け、最終的に立ち上がって戦うまでの経緯を描いています。

物語は、ヌアザの腕の喪失、ブレスへの王位譲渡から始まります。ブレスはフォモール族との関係を利用してダヌ神族を抑圧したため、ヌアザが王位に復帰します。ブレスは王位を取り戻すためにフォモール族に助けを求め、邪眼のバロール率いる大軍勢がアイルランドに侵攻します。

一方、ダヌ神族とフォモール族の混血であるルーがヌアザの宮廷に現れ、その才能を認められて軍の指揮権を得ます。戦いの中、ヌアザはバロールに殺されますが、ルーがバロールを討ち取り、フォモール族に大打撃を与えます。ブレスは捕らえられますが、ダヌ神族に農耕を教えることを条件に助命されます。最後に、ルー、ダグザ、オグマの三人が、フォモール族に奪われたダグザの竪琴を取り戻し、物語は幕を閉じます。

第二次マグ・トゥレドの戦いは、『アイルランド来寇の書』やアイルランドの年代記に記述された戦争を膨らませたものであり、古代アイルランドの神々の物語を知る上で非常に重要な資料となっています。

翻案

パードリック・コラムによって翻案された戯曲『モイトゥラ――踊り子のための劇』が、1963年にダブリン劇場フェスティバルで初演されました。

マグ・トゥレドの戦いは、アイルランド神話の中でも特に重要な物語であり、その壮大なスケールと魅力的な登場人物たちは、今日でも多くの人々に愛されています。

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