ブリギッド

ブリギッド：ケルト神話の女神、聖女、そしてその多面性

ブリギッド（Brigit, Brighit, Brid, Briid, Brigid）は、古代アイルランドにおいて広く信仰されていた女神です。その名は「崇拝される者」や「高貴な者」を意味し、火、金属細工、豊穣、家畜、作物の実り、そして詩といった多岐にわたる領域を司っていました。ブリード、ブリーイッド、ブリギッテとも呼ばれています。

女神ブリギッドの概略

ブリギッドは、ダグザ（Dagda）の娘であり、後世の伝承ではSenchan Torpeistの妻とされています。単独の女神として崇拝される一方で、ブレグ（偽り）、メング（狡猾）、メイベル（醜さ）という3つの側面を持つ女神としても考えられていました。

ブリギッドの祭日は、2月1日のインボルクの祭りです。この祭りは牝牛の乳搾りに関わるもので、アイルランドの四大祭の一つとして重要な意味を持っていました。

ブリギッドは、ローマ神話のミネルウァやウェスタ、ブリテンの女神ブリガンティア（Brigantia）と関連付けられることもあります。アイルランドにはブリギッド、ブリジット（Beigid, Brigit）という名の聖女が15名存在しますが、神話の女神ブリギッドは、キリスト教の聖女ブリギッドと同一視されることもありました。ウェスタと比較されるように、ブリギッドは処女神としての側面も持ちながら、キルデアの聖ブリギッドとしては豊穣の女神としての側面が強調されています。

また、ブリギッドはフォモール族（Fomorians）のブレス（Bres）の妻でもあります。

家族関係

Tuireannによれば、ブリギッドはCreidne、Luchataine、ゴヴニュ（Goidniu）の母親であるとされています。

ブリギッドの多面的な魅力

ブリギッドは、ケルト神話において非常に重要な位置を占める女神であり、その信仰はキリスト教の時代にも影響を与え続けました。火、金属細工、豊穣、詩といった多様な側面を持つブリギッドは、人々の生活に深く根ざし、畏敬の念を集めていたことがうかがえます。女神としての側面と聖女としての側面を併せ持つブリギッドは、アイルランドの文化と信仰において特別な存在と言えるでしょう。

参考文献

ミランダ・J・グリーン『ケルト神話・伝説辞典』井村君江監訳、東京書籍、2006年　ISBN 4-487-76172-7
James Mackillop Oxford: A Dictionary of Celtic Mythology, Oxford UP, 1998, 2004, ISBN 0-19-860967-1
フィリップ・ヴァルテール『ユーラシアの女性神話-ユーラシア神話試論Ⅱ』（渡邉浩司・渡邉裕美子訳）中央大学出版部 2021年、ISBN 978-4-8057-5183-1、180-182頁。

関連項目

インボルク - ブリギット、もしくは後世の聖ブリギッドに関係する伝統の祭。
* ブリジット

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