マケドニア人

マケドニア人とは、一般的にマケドニア語を母語とし、その集団に帰属意識を持つ人々を指します。しかし、マケドニア語とブルガリア語は連続した方言分布を形成しており、その区別は近代史の複雑な経緯に深く根ざしています。19世紀後半においては、ブルガリア人とマケドニア人の境界線は曖昧であり、歴史的解釈の違いによって、同一人物がブルガリア人またはマケドニア人と見なされることもありました。

マケドニア民族としての概念が形成され始めたのは19世紀末、内部マケドニア革命組織などの活動からです。ただし、初期の段階では、ブルガリアとの統一を目指す「大ブルガリア主義」の傾向が強くありました。転換期となったのは、1912年のバルカン戦争です。ギリシャ、セルビア、モンテネグロ、ブルガリアがオスマン帝国に勝利し、マケドニア地方はバルカン同盟国によって分割されました。セルビアが獲得した地域が、現在の北マケドニア共和国の礎となっています。ブルガリアは、自国内のマケドニア人をブルガリア人とみなし、マケドニア人を少数民族として公式に認めていません。また、ギリシャ領内にもマケドニア人が居住していますが、同様に少数民族としての承認は得られていません。

マケドニア人による民族自治が確立したのは、1944年の対独レジスタンス政権と、その流れを汲むユーゴスラビア連邦人民共和国内のマケドニア人民共和国（後のユーゴスラビア社会主義連邦共和国内のマケドニア社会主義共和国）においてです。この共和国は、マケドニア共和国への改組を経て、1991年に独立を果たしました。このように、マケドニア人の民族的アイデンティティは、歴史的、政治的な影響を受けながら形成されてきたと言えるでしょう。

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