マサエシュリ

マサエシュリ：古代西ヌミディアのベルベル人部族

マサエシュリは、古代西ヌミディア（現在のアルジェリア西部）に居住していたベルベル人の部族です。紀元前3世紀頃まで、彼らは部族連合の形態を維持しており、統一された階級国家を形成するには至っていませんでした。この時代のマサエシュリに関する情報は限られていますが、彼らがこの地域において一定の影響力を持っていたことは、後の歴史的出来事から推測できます。

第二次ポエニ戦争におけるマサエシュリ

マサエシュリの歴史において特筆すべきは、第二次ポエニ戦争（紀元前218年 - 紀元前201年）における彼らの動向です。当時、マサエシュリは東ヌミディアのマシニッサ率いるマシュリ族と敵対関係にありました。第二次ポエニ戦争の初期段階では、マサエシュリの王シュファクスはローマ側についており、マシニッサ率いるマシュリ族と対立していました。この状況は、ヌミディアにおける勢力争いが、ローマとカルタゴという二大勢力の対立構造に組み込まれていたことを示しています。

しかし、シュファクスの立場は変化します。マシニッサがヌミディア全土の部族に呼びかけ、ローマに対抗する同盟を結ぼうとしていることを知ったシュファクスは、妻ソフォニスバの助言もあり、カルタゴ側へ寝返ることを決意します。この寝返りは、第二次ポエニ戦争の戦局に大きな影響を与えました。シュファクスのカルタゴへの加担は、ローマにとって大きな脅威となり、戦争の行方を左右する可能性を秘めていました。

しかし、結果としてカルタゴはザマの戦い（紀元前202年）でローマに大敗を喫し、シュファクス自身も捕虜となります。彼はローマへ送られ、そこで残りの生涯を過ごすことになりました。一方、マシュリ族はマサエシュリを併合し、ヌミディアにおける勢力を拡大しました。この出来事は、マサエシュリが歴史の表舞台から姿を消す転換点となりました。

マサエシュリの歴史的意義

マサエシュリは、短期間ではありましたが、第二次ポエニ戦争という古代世界の重要な出来事において、重要な役割を果たしました。彼らの興亡は、当時の地中海世界の勢力争い、特にローマとカルタゴの対立が、北アフリカの部族社会に深く影響を与えていたことを示しています。マサエシュリの歴史は、古代北アフリカ史を理解する上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。

参考資料

* UNESCO (1997), “Private documents of United Nations Educational Scientific and Cultural : From the Seventh Century BC to the Seventh Century AD”, History of Humanity: From the Seventh Century BC to the Seventh Century AD, United Nations Educational Scientific and Cultural, pp. 289–290, ISBN 9789231028120

もう一度検索