マシュー・ディグビー・ワイアット
サー・マシュー・ディグビー・ワイアット（Sir Matthew Digby Wyatt、1820年7月28日 - 1877年5月21日）は、19世紀のイギリスを代表する建築家であり、美術史家でもあります。彼は、イギリス東インド会社およびインド省の技師長、ロンドン万国博覧会（1851年）の事務局長、ケンブリッジ大学における最初のスレイド・スクールの教授を歴任するなど、多岐にわたる分野で活躍しました。さらに、1855年から1859年まで王立英国建築家協会の名誉事務局長を務め、1866年には王立建築家協会金賞を受賞するなど、その功績は高く評価されています。
ワイアット家は代々イギリス東インド会社に工兵を輩出しており、同社との深い繋がりがありました。彼はウィルトシャーのローデで生まれ、兄のトーマス・ヘンリー・ワイアットの事務所で建築家としての訓練を受けました。
ワイアットの建築家としての活動は多岐にわたります。アイザンバード・キングダム・ブルネルと協力してパディントン駅の東洋風の細部を設計（1852-1854年）したのをはじめ、ブリストル・テンプル・ミーズ駅の大規模増築（1871-1878年）、ケンブリッジのアデンブロック病院の増築再建（1866年、現在はケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクール）、ウェストハムのユダヤ人墓地にあるロスチャイルド霊廟などを手がけました。
1851年のロンドン万国博覧会では、事務局長としてその運営に携わっただけでなく、博覧会の展示物をまとめた書籍『19世紀の産業芸術』を制作しました。この書籍は、フランシス・ベッドフォード、Ｊ.Ａ.ビンター、ヘンリー・ラフターなどの芸術家やリトグラフ製作者のチームによって作成された160点の彩色版を含み、その質の高さから、1851年10月1日に第1部、1853年3月15日に特別イラスト入りタイトルページの入った第2部に分けて出版されました。
1855年、ワイアットは東インド会社の営繕技師長に任命され、その後インド省の専属建築家となりました。この時期には、ロンドンのインド省庁舎（1867年、現在は外務・英連邦省の一部）を設計したほか、王立インド工学校（1870年から2年間、現在はブルネル大学のラニーミードキャンパス）の内部改装工事も担当しました。このインド省庁舎のインテリアは、後に明治政府の御雇い外国人であったチャールズ・アルフレッド・シャストール・ド・ボアンヴィルによって改装されています。
ワイアットが手がけた住宅建築の例としては、ロアー・ビーディング近くに建てられた大邸宅「ニューウェルズ」（1869年頃）があります。この建物は『サセックス郡の歴史：第6巻』にも紹介されており、1946年から1968年に火災で焼失するまで男子予科学校として使用されていました。
また、ワイアットは鉄道車両のデザインにも携わっています。1862年には、ニューカッスル・アポン・タインのロバート・スチーブンソン社向けに、エジプト鉄道で使用される2-2-4T型蒸気機関車の内外装をデザインしました。この機関車は「カディブ（Khedive）の列車」と呼ばれており、現在カイロのエジプト鉄道博物館に展示されています。
ワイアットは、建築や美術に関する多くの著作を残しており、その中には以下のようなものがあります。
A report on the eleventh French exposition of the products of industry. London: Chapman and Hall. (1849).
Metal-work and its artistic design : dedicated, by express permission, to the Right Hon. Henry Labouchere. (1852).
The Byzantine and Romanesque court in the Crystal Palace. (1854)（J.B.ワリングとの共著）
Views of the Crystal Palace and park, Sydenham. London: Day and Son. (1854)（P.H.デラモッテとの共著）
Notices of sculpture in ivory, consisting of a lecture on the history, methods, and chief productions of the art, delivered at the first annual general meeting of the Arundel society, on the 29th June, 1855. London: The Arundel Society. (1856)
Notices of sculpture in ivory, consisting of a lecture on the history, methods, and chief productions of the art, delivered at the first annual general meeting of the Arundel society, on the 29th June, 1855. London: The Arundel Society. (1856)（エドモンド・オールドフィールド、J.A.スペンサーとの共著）
The art of illuminating as practised in Europe from the earliest times : illustrated by borders, initial letters, and alphabets. (1860)（W.R.タイムズとの共著）
Fine art: a sketch of its history, theory, practice and application to industry. (1870).
An architect's note-book in Spain: principally illustrating the domestic architecture of that country. (1872).
ワイアット建築王朝
英国王立建築家協会
ワイアットがデザインしたケンブリッジのピットクラブ
* ニューウェルズ予科学校 - ワイアットが設計したサセックスの私邸
ワイアットの生涯と業績に関するより詳細な情報は、以下の参考文献を参照してください。
人物
ワイアット家は代々イギリス東インド会社に工兵を輩出しており、同社との深い繋がりがありました。彼はウィルトシャーのローデで生まれ、兄のトーマス・ヘンリー・ワイアットの事務所で建築家としての訓練を受けました。
ワイアットの建築家としての活動は多岐にわたります。アイザンバード・キングダム・ブルネルと協力してパディントン駅の東洋風の細部を設計（1852-1854年）したのをはじめ、ブリストル・テンプル・ミーズ駅の大規模増築（1871-1878年）、ケンブリッジのアデンブロック病院の増築再建（1866年、現在はケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクール）、ウェストハムのユダヤ人墓地にあるロスチャイルド霊廟などを手がけました。
1851年のロンドン万国博覧会では、事務局長としてその運営に携わっただけでなく、博覧会の展示物をまとめた書籍『19世紀の産業芸術』を制作しました。この書籍は、フランシス・ベッドフォード、Ｊ.Ａ.ビンター、ヘンリー・ラフターなどの芸術家やリトグラフ製作者のチームによって作成された160点の彩色版を含み、その質の高さから、1851年10月1日に第1部、1853年3月15日に特別イラスト入りタイトルページの入った第2部に分けて出版されました。
1855年、ワイアットは東インド会社の営繕技師長に任命され、その後インド省の専属建築家となりました。この時期には、ロンドンのインド省庁舎（1867年、現在は外務・英連邦省の一部）を設計したほか、王立インド工学校（1870年から2年間、現在はブルネル大学のラニーミードキャンパス）の内部改装工事も担当しました。このインド省庁舎のインテリアは、後に明治政府の御雇い外国人であったチャールズ・アルフレッド・シャストール・ド・ボアンヴィルによって改装されています。
ワイアットが手がけた住宅建築の例としては、ロアー・ビーディング近くに建てられた大邸宅「ニューウェルズ」（1869年頃）があります。この建物は『サセックス郡の歴史：第6巻』にも紹介されており、1946年から1968年に火災で焼失するまで男子予科学校として使用されていました。
また、ワイアットは鉄道車両のデザインにも携わっています。1862年には、ニューカッスル・アポン・タインのロバート・スチーブンソン社向けに、エジプト鉄道で使用される2-2-4T型蒸気機関車の内外装をデザインしました。この機関車は「カディブ（Khedive）の列車」と呼ばれており、現在カイロのエジプト鉄道博物館に展示されています。
代表的な出版物
ワイアットは、建築や美術に関する多くの著作を残しており、その中には以下のようなものがあります。
A report on the eleventh French exposition of the products of industry. London: Chapman and Hall. (1849).
Metal-work and its artistic design : dedicated, by express permission, to the Right Hon. Henry Labouchere. (1852).
The Byzantine and Romanesque court in the Crystal Palace. (1854)（J.B.ワリングとの共著）
Views of the Crystal Palace and park, Sydenham. London: Day and Son. (1854)（P.H.デラモッテとの共著）
Notices of sculpture in ivory, consisting of a lecture on the history, methods, and chief productions of the art, delivered at the first annual general meeting of the Arundel society, on the 29th June, 1855. London: The Arundel Society. (1856)
Notices of sculpture in ivory, consisting of a lecture on the history, methods, and chief productions of the art, delivered at the first annual general meeting of the Arundel society, on the 29th June, 1855. London: The Arundel Society. (1856)（エドモンド・オールドフィールド、J.A.スペンサーとの共著）
The art of illuminating as practised in Europe from the earliest times : illustrated by borders, initial letters, and alphabets. (1860)（W.R.タイムズとの共著）
Fine art: a sketch of its history, theory, practice and application to industry. (1870).
An architect's note-book in Spain: principally illustrating the domestic architecture of that country. (1872).
関連項目
ワイアット建築王朝
英国王立建築家協会
ワイアットがデザインしたケンブリッジのピットクラブ
* ニューウェルズ予科学校 - ワイアットが設計したサセックスの私邸
参考文献
ワイアットの生涯と業績に関するより詳細な情報は、以下の参考文献を参照してください。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。