マスジェデ・ソレイマーン

マスジェデ・ソレイマーン

イラン南西部に位置するフーゼスターン州の主要都市の一つ、マスジェデ・ソレイマーン（ペルシア語: مسجد سلیمان）は、中東における近代石油開発の歴史において極めて重要な役割を果たしたことで知られています。ユーラシア大陸のこの地域で、近代的な掘削技術を用いて初めて石油が大規模に発見されたのがこの地でした。2007年の統計によると、この都市の人口は約10万4千人です。

名称の由来

都市名である「マスジェデ・ソレイマーン」は、ペルシア語で「ソレイマーン（ソロモン）のモスク」という意味を持ちます。この独特な名称は、地元の人々がかつてこの地に存在した古代の遺跡群を、伝説的な人物であるソレイマーン（旧約聖書のソロモン王に比定される）に結びつけ、畏敬の念を込めてそう呼んでいたことに由来すると伝えられています。具体的には、古代ペルシア帝国、特にハカーマニシュ朝（アカイメネス朝）時代に遡る可能性のある遺跡が、その起源とされています。この名称は、時に「マスジッド・イ・スレイマン」とも表記され、あるいは単にアルファベットで「M.I.S.」と略されることもあります。

石油開発の歴史

マスジェデ・ソレイマーンの歴史を語る上で、石油の存在は不可欠です。この都市の中心部にあるナフトゥーン地区（Maidan-i-Naftun）こそ、中東地域における近代的石油採掘が始まった歴史的な場所です。1908年、このナフトゥーン地区で大規模な石油が発見されたことは、中東における石油産業の黎明を告げる出来事であり、その後の世界のエネルギー供給や地政学に多大な影響を与えました。この地域で発見されたナフトゥーン油田は、現在も重要なエネルギー資源であり続けています。油田の権益に関しては、かつて2002年にカナダの企業が開発権を得ましたが、その後に科された経済制裁の影響を受けて撤退しました。その後、2004年には中華人民共和国の国有石油会社であるCNPC（中国石油天然ガス集団）がこの油田の権益を取得しています。

住民と社会

マスジェデ・ソレイマーンの住民構成は、特定の民族グループによって特徴づけられています。この都市には、バフティヤーリー族と呼ばれる人々が多く居住しており、彼らが都市の社会や文化において重要な役割を果たしています。バフティヤーリー族は、イラン南西部のザグロス山脈地域を中心に居住するイラン系民族であり、独自の歴史や文化を持っています。

著名な出身者

この都市からは、イラン・イスラーム共和国の現代政治において重要な役割を担う人物も輩出されています。例えば、現在、公益判別会議の書記を務めているモフセン・レザーイー氏は、マスジェデ・ソレイマーンの出身として知られています。

マスジェデ・ソレイマーンは、その名称の古代的な響きとは裏腹に、近代史における石油発見という劇的な出来事の舞台となり、現在もエネルギー資源の重要拠点として、またバフティヤーリー族文化が息づく都市として、多様な側面を持っています。

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