マスト (曖昧さ回避)

マスト

「マスト」という言葉は、大きく分けて英語の "mast" に由来する「柱状のもの」を指す場合と、英語の "must" に由来する「必須」「欠かせない」という意味を持つ場合があり、文脈によって意味が異なります。また、様々な分野で固有名詞としても用いられています。本項では、これらの多岐にわたる「マスト」の意味について詳述します。

1. マスト (mast) - 柱や構造物

もともと、船の帆を張るための「帆柱」を意味する言葉ですが、そこから転じて、地上や構造物において垂直に立つ長い部材や支柱全般を指すようになりました。

具体的な例としては、電波塔のような「鉄塔」、何かを支える「支柱」、旗を掲げる「旗竿」など、様々な種類の柱状構造物が「マスト」と呼ばれることがあります。

産業機械の分野でもこの言葉は用いられます。
クレーンでは、タワークレーンやスタッカークレーンの本体部分、あるいは高さを追加するための構成要素を指します。
飛行船においては、地上に係留するための柱を「係留マスト」と呼びます。
フォークリフトでは、荷物を載せるフォークを上下させるための垂直なレール状の構造部分を「マスト」と称します。このフォークリフトのマストには、一段式だけでなく、複数の段が伸縮する「テレスコピック式」のものも存在します。

略称としては、「MAST」が「maritime air systems and technologies」（海洋航空システムおよび技術）の頭文字語として用いられる例があります。

医学分野では、アレルギー反応などに関わる細胞として「マスト細胞」が存在します。

固有名詞としては、以下のような例が挙げられます。
積水ハウス不動産グループが展開する賃貸住宅のブランド名。
ヴィジュアル系バンド「Aliene Ma'riage」のギタリストの名称。
かつて存在したコーラスグループ「白鳥座」のメンバーの呼び名の一部。

2. マスト (must / Must) - 必須、欠かせないものなど

こちらは英語の助動詞 "must" に由来する用法です。「～しなければならない」「～に違いない」といった義務や推量を表す言葉として広く知られています。

さらに、形容詞として「欠かせない」「必須の」という意味でも用いられます。この意味では "necessary" などが類語となります。

この形容詞的な用法が名詞化し、「欠かせない（必須の）事物や人」そのものを指すこともあります。

派生した表現として、「マスト・アイテム」（絶対に持っておくべき物、特に衣服やアクセサリーなど）や、「マスト・ブック」（必読書）といった言葉が日常的に使われています。

ゲームにおいては、特定の状況下でプレイヤーが必ず取らなければならない行動を指して「マスト行動」のように使われることがあります。例えば、ウォー・シミュレーションゲームにおける特定の戦闘行動を指す「マスト・アタック」などがあります（詳細についてはウォー・シミュレーションゲームの戦闘に関する項目を参照）。

飲食物の製造に関連して、果実酒、特にワインを造る過程で、酵母による発酵が始まる前、あるいは発酵途中の果汁を「ムスト (must)」と呼びます。

動物学において、ゾウやラクダといった特定の哺乳類の雄が経験する、非常に攻撃的になる周期的な発情期を「マスト (Musth)」と呼びます（綴りが異なります）。

固有名詞としては、韓国の男性アイドルグループ「2PM」がリリースしたアルバムのタイトル『MUST』などの例があります。

結論

「マスト」という言葉は、由来の異なる複数の意味を持ち、構造物から抽象的な必要性、さらには特定の専門用語や固有名詞に至るまで、多様な文脈で使用されています。その意味は、文脈や綴り（mast, must, Musth）によって区別する必要があります。

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