マタタビ

マタタビ（木天蓼）とは

マタタビ（学名: Actinidia polygama）は、マタタビ科マタタビ属に属する落葉性のつる植物です。別名ナツウメとも呼ばれ、日本の山地に広く自生しています。夏に白い花を咲かせ、その時期に枝先の葉が白くなるのが特徴的です。

名称の由来

和名「マタタビ」の由来には諸説あります。

古くは『本草和名』に「和多々比」、「延喜式」に「和太太備」と記述されています。
「またつみ」という説もあり、「また」は二つ、「つ」は助字、「び」は実を意味するとされます。
有力な説としては、アイヌ語の「マタタムブ」（冬の亀の甲）に由来すると言われています。これは、虫えいの果実が病変部に見えることにちなむとされます。ただし、「タムブ」は苞（手土産）を意味するという説もあります。

俗説として、「旅人がマタタビの実を食べると元気を取り戻し、再び旅を続けられた」という話がありますが、これは後付けの民間語源と考えられています。

別名としては、カタシロ、コヅラ、ツルウメ、ツルタデ、ナツウメ、ネコカズラ、ネコナブリ、ネコナンバン、ハナマタタビなどがあります。また、中国植物名（漢名）では、葛棗獼猴桃、葛棗子、木天蓼と称されます。

分布と生育環境

マタタビは、日本、朝鮮半島、中国など東アジアに分布しています。日本では北海道から九州まで見られ、山沿いの平地から山地に自生し、湿り気のある沢沿いや林縁に多く見られます。近縁種のミヤママタタビは、より標高の高い地域に分布します。

特徴

形態: 落葉性のつる植物で、他の木に絡みつきながら成長します。茎は暗灰褐色で、縦横に割れ目があります。葉は互生し、卵形から楕円形で、葉縁に細かい鋸歯があります。初夏の花期には葉の一部が白くなる特徴があります。
花: 6月から7月にかけて、直径2cmほどの白い5弁花を咲かせます。雌雄異株ですが、両性花をつけることもあります。花は芳香があり、ウメの花に似ています。
果実: 液果で、長さ2～2.5cmの楕円形です。未熟な果実は緑色ですが、晩秋には熟して黄緑色から橙色になります。果実には、マタタビミバエやマタタビアブラムシによる虫こぶ（虫癭果）が形成されることがあります。
冬芽: 冬芽は葉痕に隠れるように付いており、先端が少しだけ見える半隠芽です。

ネコへの影響

マタタビには、ネコ科の動物を恍惚とさせる成分が含まれています。これは、ネペタラクトール、マタタビラクトンなどの臭気物質によるものです。イエネコだけでなく、ライオンやトラなどの大型ネコ科動物も同様の反応を示します。

ネコのマタタビ反応

「猫に木天蓼」ということわざがあるように、マタタビはネコにとって特別な植物です。ネコはマタタビの葉や枝、実を舐めたり噛んだり、体に擦り付けたりします。中には陶酔状態になるネコもいます。

この反応は古くから知られており、江戸時代の浮世絵にも描かれています。1950年代には、マタタビの活性物質が「マタタビラクトン」と呼ばれる化学成分であることが報告されました。

近年、岩手大学の研究グループにより、ネコのマタタビ反応は、蚊の忌避成分であるネペタラクトールを体に擦りつけるための行動であることが解明されました。また、マタタビの葉を噛むことで、蚊よけ成分の放出量が10倍以上に増えることも判明しました。

利用

マタタビは、食用、薬用、生薬として利用されています。

食用: 果実、若芽、若いつる先が食用になります。完熟した果実は生で食べられ、未熟なものは塩漬けや味噌漬け、果実酒などに利用されます。若芽や茎は茹でておひたしや和え物に、花は酢の物に利用します。
* 生薬: 虫こぶ（木天蓼）は、鎮痛、保温、強壮などの効果があるとされ、神経痛やリウマチなどの症状に用いられます。果実も同様に薬効があるとされ、民間療法では乾燥させた果実を煎じて服用します。

栽培は、果実をつける雌株や両性花のある株を挿し木で行います。猫が好むため、猫よけの対策が必要となります。

まとめ

マタタビは、猫を惹きつけるだけでなく、人間にとっても様々な用途がある植物です。その特異な性質は、古くから人々に利用されてきました。近年では、マタタビの成分が持つ新たな可能性も解明されつつあり、今後の研究が期待されます。

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