マチン沖海戦

マチン沖海戦

マチン沖海戦は露土戦争の最中、1877年5月25日から26日にかけて行われた重要な海戦である。この戦闘では、ルーマニア海軍の水雷艇「ルンドゥニカ」がオスマン帝国海軍のモニター艦「セイフィ」と遭遇し、水雷艇が一方的に敵艦を沈めるという歴史的な出来事をもたらした。

背景

露土戦争が始まる2年前の1875年、ルーマニア公国は初めて自国の水雷艇を手に入れた。この艇はイギリスで建造され、ルンドゥニカという名前が付けられた。排水量は10トンで、装備として外装水雷が1本搭載されていた。南部の黒海を舞台に、蒸気エンジンによって8ノットの速度で航行し、5人の乗員を擁していた。

1877年4月、ルーマニアは露土戦争に参戦し、ロシア帝国と同盟条約を結んだ。この結果、ロシア陸軍のルーマニア領通過が許可された。ルーマニアは5月10日に独立を宣言し、戦争の局面が緊迫していく。

戦闘の経過

同盟条約に基づき、「ルンドゥニカ」はルーマニアとロシアの共同指揮下に置かれることとなり、ロシア側では「ツァーレヴィチ」と呼ばれた。乗員はロシアの大尉2名と、ルーマニアの3名で構成されていた。

戦闘は1877年5月25日から26日の夜、マチン近くで展開された。「ルンドゥニカ」がオスマン帝国のモニター艦「セイフィ」に接近すると、セイフィは反撃として砲撃を行ったが、全て外れた。4回目の砲撃が発射される前に、ルンドゥニカの外装水雷がセイフィの船体に命中する。すると、セイフィは大爆発を起こし、高さ40メートルまで破片が飛び散るという凄まじい光景が広がった。

セイフィは沈没寸前の状態になりながらも、再度砲撃を試みるが、運悪く再び命中し、さらに大きな爆発を引き起こす。乗員たちは必死にルンドゥニカに向けて発砲を続けるも、効果が出ず、ルンドゥニカは戦闘後に撤退に成功した。この一連の戦闘結果により、セイフィは完全に沈没した。

戦闘の意義と結果

この戦闘は水雷艇が相手艦に対して一方的に沈没をもたらした初めての例となった。この出来事により、以後のオスマン帝国の軍艦は、外装水雷を装備した水雷艇に対して警戒心を強め、目に見える形で撤退するようになった。

ルンドゥニカの乗員はその戦功を称えられ、ドゥバソフとシェスタコフには聖ゲオルギア勲章が、またルムヂェスクは聖ウラジーミル勲章とルーマニアの星勲章を授与された。その後、ロシア陸軍がドナウ川を渡河した際に、ルンドゥニカの指揮権はロシアに戻されることとなった。

その後

ルンドゥニカの指揮官ムルヂェスクは、のちにルーマニア初の提督に昇格する。1939年6月14日には、彼を記念して建造された機雷敷設艦・海防艦「アミラル・ムルヂェスク」が進水するなど、彼の栄光は長く語り継がれることとなった。

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