マットペイント

マットペイントとは

マットペイント（matte paint）は、映像制作における特別な技術で、実写映像に手描きの背景を合成する手法を指します。この技術は特にアナログ時代において重要な役割を果たし、リアルな風景を創り出すことで、映画や特撮の表現力を大きく向上させました。

マットペインターの役割

この技術を使用して背景を描くアーティストは「マットペインター」と呼ばれます。著名なマットペインターにはピーター・エレンショウやマイケル・パングラジオ等の名前が挙げられます。彼らは高度な技術を駆使し、魅力的な視覚効果を生み出します。

映像技術の進化

近年のSFX技術は、コンピューター生成画像（CG）を主に用いる傾向がありますが、アナログ時代では超リアルな手描きのマットペイントが主流でありました。当初のマットは、光学合成の際に、特定の範囲を未露光にすることから始まりました。この未露光部分に景観を描いた絵を重ねて合成することで、幻想的な世界を描き出す手法です。

マットの種類

マットには大きく分けて、「ステーショナリーマット（固定マスク）」と「トラベリングマット（動くマスク）」があります。前者は固定された範囲を覆い、後者は動きがある被写体に応じてマスクの範囲が変化します。この方式の技術は映画の黎明期から利用され、長い歴史を持つ手法です。

描画の手法

マットペイントは通常、1メートル×2メートル程度の大きなボードやガラス板に描かれます。描かれた絵をカメラの前に配置することで、実写映像と合成が可能です。実写とともにリアルな映像を作り上げるためには、黒く塗った部分を考慮する必要があります。

グラスショット

「グラスショット」は、ガラス板に絵を描いて撮影する方法であり、現場で直接撮影する場合とスタジオで後処理する場合があります。前者は条件が厳しく、短時間で完成度を求められます。後者の場合、実写撮影後にスタジオで絵の完成度を高める手法が使われます。

日本のマットペイント

日本におけるマットペイントの初使用は、1940年の東宝映画『エノケンの孫悟空』であり、特撮監督の円谷英二が関わりました。その後、日本の映像制作においても特に時代劇や特撮映画で多く用いられました。

デジタル時代の展開

1990年代以降、パソコンの普及により、マットペイントもデジタルツールによって進化しました。Adobe Photoshopなどを使用して、よりリアルで表現力豊かな背景を作り上げることが可能になりました。CG技術によって複数の絵を3次元空間に配置し、リアルな視点で観察できる手法が一般化しています。

まとめ

マットペイントはアナログからデジタルまでの過程で進化し続け、映像制作の基盤を支えてきました。この技術は今後も新しいアイデアや技術とともに、映画や特撮の表現を豊かにしていくことでしょう。

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