マツブサ

マツブサ（松房、学名: Schisandra repanda）は、マツブサ科に属するつる性の落葉樹で、その特徴的な樹皮と果実からその名がつけられました。この植物は、樹皮が松の木のように縦に割れており、つるを切ると松脂のような独特の香りがするのが特徴です。また、秋にはブドウの房のように実をつけることから、「松の房」を意味する「マツブサ」という名前が付けられました。

特徴

マツブサは、つる性の植物で、他の樹木に巻き付いて成長します。つるは太くなると直径2cmほどになり、折ると松脂のような香りがします。樹皮は茶褐色でコルク質が発達しており、縦に割れます。若い柔らかいつるは、縄の代わりとしても使われていました。

葉は互生し、長枝には間隔を置いてつき、短枝の先には3〜8枚がまとまって放射状につきます。葉の形は卵形から広楕円形で、先端は短く尖り、基部は円形または広いくさび形です。葉の縁には3〜5個の波状の鋸歯があり、表面は緑色で光沢があり、裏面は淡い緑色をしています。特に裏面が白いものをウラジロマツブサと呼ぶこともあります。葉脈は目立たず、葉柄は2〜5cmで、葉身の半分以上の長さがあります。

マツブサは雌雄異株で、5〜7月頃に黄白色の芳香のある花を咲かせます。花は短枝の鱗片腋から垂れ下がり、直径1cmほどです。花被片は6〜12枚で、楕円形をしています。雄花には5個の雄しべがあり、花糸が合着しています。雌花には、らせん状に配置された12〜17個の離生した雌しべがあります。

花後、花托が伸びて、ブドウの房のような集合果になります。果実は液果で、8〜9月頃に黒藍色に熟します。果実も松脂のような香りがします。集合果の中にある個々の果実は球形で、中に1〜2個の腎臓形の種子を含んでいます。種子は表面にイボ状の突起があります。

分布と生態

マツブサは、北海道南部から九州、韓国の済州島にかけて分布しています。山林や丘陵地の林内や林縁に、他の樹木に絡みついて生息しています。

利用

マツブサは、古くから様々な用途に利用されてきました。生薬としては、秋につると葉を採取して乾燥させたものが「松藤（しょうとう）」と呼ばれ、浴湯料として神経痛やリウマチの緩和に用いられます。また、果実は薬用や食用としても利用され、ブドウに似た甘酸っぱい味が特徴です。果実酒、お茶、ジャムなどに加工され、生のままでも食べられます。特に、エビヅルやサンカクヅルに比べて果実が大きいことから、生食でも美味しく食べられます。また、同属のチョウセンゴミシと同様に、鎮咳や強壮の効果もあるとされています。長野県箕輪町では、マツブサを特産品として栽培しており、ワインやジュースの原料として利用しています。伊那地方では、マツブサは「ごむし」と呼ばれ、この地域で作られたワインは「ごむしワイン」として親しまれています。

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