マトラ・MS11

マトラ・MS11：F1挑戦の軌跡

マトラ・MS11は、フランスの自動車メーカー、マトラが1968年のF1世界選手権参戦のために開発したフォーミュラカーです。成功を収めたF2マシン、MS7をベースに進化したモデルと言えるでしょう。マトラは、ティレルチームに供給したMS10と並行してMS11の開発を進め、ワークスチーム自らがこのマシンを駆りました。しかし、MS10の影に隠れ、その活躍はMS10ほど目覚ましいものではありませんでした。

開発：V12エンジンの咆哮と課題

MS11最大の特徴は、バンク角60度のV型12気筒エンジンです。最高出力は約390馬力を発揮しましたが、MS10に搭載されたコスワースV型8気筒エンジンを下回っていました。さらに、6本の排気管から生み出されるけたたましいサウンドは、当時のF1マシンの中でも群を抜いて騒々しいものでした。エンジンの構造上、荷重支持部がなかったため、コックピット後部に補強材を追加する必要がありました。この設計上の制約が重量増加につながり、MS11はMS10と比較して、かなり重いマシンとなってしまったのです。

レース戦績：輝きと影

MS11は主にジャン＝ピエール・ベルトワーズがドライブし、シーズン後半にはアンリ・ペスカロロが2台目のMS11で参戦しました。デビュー戦となったモナコグランプリでは、ベルトワーズはアクシデントによりリタイアという悔しい結果に終わりました。その後も苦戦が続きましたが、オランダグランプリで大きな成果を上げます。見事2位を獲得し、ファステストラップも記録。このレースでは、チームメイトのMS10が優勝したため、マトラは1-2フィニッシュを達成しました。これがMS11の最高成績となりました。イタリアグランプリでは5位に入賞。しかし、マトラのワークス活動は1年で終了し、翌1969年シーズンはコスワースDFVを搭載したMS80の開発に注力することとなります。皮肉にも、このMS80はティレルチームによってドライバーズ、コンストラクターズタイトルを獲得することになります。

F1におけるMS11：その位置付け

1968年シーズンのコンストラクターズランキングでは、マトラ・フォードが45ポイントで3位、マトラワークスは8ポイントで9位という結果でした。MS11は、マトラのF1挑戦における重要な一歩ではありましたが、期待されたほどの成果は上げられませんでした。しかし、その挑戦は、後の成功へと繋がる重要な経験となったことは間違いありません。V12エンジンの咆哮と、その開発に込められたマトラの技術力は、F1の歴史に独特な足跡を残しました。MS11は、成功とは異なる道を歩んだマシンとして、F1の歴史に刻まれています。パワフルなエンジンと挑戦的な設計は、後世のマシン開発にも影響を与えたと推察されます。MS10と共に、マトラのF1挑戦の象徴として、そしてF1の歴史の一端として、MS11は記憶されるべき存在なのです。

参考文献

* Stats F1 (Matra MS11 @ Stats F1)

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