マヌエル・ガルシア・デ・ラ・プラダの肖像

『マヌエル・ガルシア・デ・ラ・プラダの肖像』

概要

『マヌエル・ガルシア・デ・ラ・プラダの肖像』は、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤによって1805年頃に制作された肖像画です。この作品は、ナポレオン時代にマドリード市長を務めたマヌエル・ガルシア・デ・ラ・プラダの姿を描いています。現在、この作品はアメリカのアイオワ州、デモイン・アート・センターに所蔵されています。

人物背景

マヌエル・ガルシアは1768年にマドリードで裕福な商人の子として生まれました。父フアン・シクスト・ガルシア・デ・ラ・プラダはサン・カルロス国立銀行の創設者の一人です。マヌエルはこの銀行の理事会メンバーとして活躍し、1808年、フランス軍による占領の最中にバイヨンヌ会議に出席し、バイヨンヌ憲法に署名しました。

その後、ホセ1世の官僚機構に加わり、1811年にはマドリード市長に任命されましたが、隣国フランスへの亡命を余儀なくされました。この時期に、彼はゴヤや他の著名な芸術家とも友情を深め、多くの美術品を所有していました。1818年にスペインに戻ってからも、ゴヤの代理人として活動し続けました。

作品の特徴

肖像画では、マヌエル・ガルシアが全身で描かれており、四分の三正面の姿で立っています。彼は木製のテーブルと椅子の間に立ち、左手で椅子の背もたれを握り、右手で小型犬を撫でながら、鑑賞者をじっと見つめています。その姿にはダンディズムが漂い、特にフランスのエンパイア様式の衣装が際立っています。

彼は高い襟の白いレースシャツの上に、金ボタンが目を引く青いフロックコートを着ており、下半身には黄色のズボンに白いストッキングを身につけています。椅子の上には、彼の黒いシルクハットが置かれ、当時の流行の髪型であるもみあげの豊かな髪が特徴です。

ゴヤは、暗い背景に対してマヌエルの人物像を強調し、衣服の明るい色彩を用いることで、鑑賞者の興味を引いています。この作品は、19世紀初頭における肖像画の新しい動向を示すものとして評価されています。

来歴

この肖像画は、最初はマヌエル・ガルシアの一家から出て、やがてルイス・イ・プラドのコレクションに加わりました。1900年には美術収集家エミール・パキュリーに渡り、その後1903年に美術商ジョルジュ・プティによって売却されました。

その後、夫妻のコレクションとして有名なジョン・ジャッフェとアンナ・ジャッフェによって所有されましたが、1943年にヴィシー政権の手によって押収されてしまいます。肖像画はその後、さまざまな所有者の手を経て、1951年にジャッフェ夫妻の相続人に返還されました。そして1952年、ニューヨークの美術商によって売却され、最終的にはデモイン・アート・センターによって購入されました。

修復と展示

肖像画は長年にわたって保存および修復作業が行われており、2021年には修復が完了しました。同年6月には「ゴヤの帰還」という展覧会で再度展示され、多くの観客の目を引きました。

この作品は、ゴヤの画業の一端を知る貴重な遺産であり、彼の友人であったマヌエル・ガルシア・デ・ラ・プラダを通じて、当時の社会や文化についての洞察も提供してくれます。

もう一度検索