ジョルジュ・プティ

ジョルジュ・プティ：印象派を支えた美術商

ジョルジュ・プティ (1856-1920) は、フランスを代表する美術商として、19世紀後半の美術界に大きな足跡を残しました。裕福な家庭に生まれ、若くして多額の遺産を相続した彼は、その後、画商としての才能を開花させ、特に印象派画家たちの作品販売に大きく貢献しました。

彼の父、フランソワ・プティはパリで美術商を営んでおり、ジョルジュはその事業と莫大な財産を相続。パリの社交界で活躍し、年間40万フランにも上る豪勢な生活を送ったと伝えられています。

美術商としてのキャリアは、エルネスト・オシュデのコレクション売立てへの関与がきっかけでした。オシュデはクロード・モネなどの印象派画家のパトロンとして知られています。この経験を通して、プティは印象派作品の魅力を深く理解し、積極的に収集・販売するようになりました。

しかし、プティは印象派のみに特化したわけではありません。伝統的な絵画も取り扱い、同時代の有力な美術商、ポール・デュラン＝リュエルやブッソ・ヴァラドン商会と激しい競争を繰り広げました。

1881年、プティはゴドー・ド・モロワ通りに自身の画廊を開設します。これは、権威あるサロン・ド・[[パリ]]以外で作品を発表・販売できる場として、多くの画家にとって非常に重要な存在となりました。さらに1882年には、セーズ通りに豪華な画廊を構え、「フランス人画家および外国人画家による国際美術展」を開催。フランス大統領であるジュール・グレヴィも招いたこの展覧会は、ジェームズ・マクニール・ホイッスラーやジュゼッペ・デ・ニッティスといった著名な画家たちの作品を展示し、大きな成功を収めました。

プティの画廊は、印象派画家たちにとって重要な発表の場となりました。特に1885年の国際美術展へのクロード・モネの参加は画期的でした。モネはそれまでデュラン＝リュエルと取引していましたが、専属契約を望まず、プティの画廊を選んだのです。この展覧会には、サロン・ド・[[パリ]]系の画家も参加しており、モネは彼らと競演する機会を得ました。しかし、エドガー・ドガはプティの商業主義を批判し、モネの出品を非難するなど、賛否両論もあったようです。

その後も、プティの画廊はカミーユ・ピサロ、ピエール＝オーギュスト・ルノワール、アルフレッド・シスレーといった印象派の巨匠たちの作品を展示し続けました。シスレーは1880年代から1890年代にかけて大規模な回顧展を開催するなど、プティとの関係は深く、1889年にはモネとオーギュスト・ロダンの2人展、1898年にはモネの「セーヌ川の朝」の個展を開催するなど、精力的に展覧会を開催し続けました。

1920年、ジョルジュ・プティは亡くなりました。その後、画廊は売却され、1933年に閉鎖されるまで営業を続けました。ジョルジュ・プティの功績は、単なる美術商の枠を超え、印象派をはじめとする多くの芸術家の発展に多大な貢献をした、美術史に名を残す人物として評価されています。彼のおかげで、多くの作品が世に送り出され、今日、私たちが印象派の絵画を鑑賞できるのも、彼の存在があったからと言えるでしょう。

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