マヌー国立公園

マヌー国立公園は、ペルーのマードレ・デ・ディオス県とクスコ県にまたがる広大な国立公園です。その面積は約15,328平方キロメートルに及び、周辺の生物圏保護区や文化保護区を含めると、18,811平方キロメートルにもなります。この広大な土地は、標高150mのアマゾン盆地から4200mのプーナと呼ばれる草原地帯まで、多様な生態系を保護しています。

公園の地理と特徴

マヌー国立公園は、アンデス山脈から流れ出るマヌー川流域をほぼ全域カバーしています。アクセスが非常に難しく、低地地域へはマヌー川をボートで遡るのが唯一の手段です。このため、公園は手つかずの自然が残されており、その豊かな生物多様性が維持されてきました。公園への入り口は厳重に監視され、保護活動が行われています。一方で、公園南部にはクスコ＝パウカルタンボ＝シントゥヤ道路があり、高地の生態系にもアクセス可能です。

生物多様性の宝庫

マヌー国立公園の最大の魅力は、その驚異的な生物多様性です。公園内には15,000種を超える植物種が生息し、1ヘクタールあたり250種を超える樹木が確認されています。また、鳥類は800種以上が生息し、これは北米の全野鳥種に匹敵するほどです。その他にも、哺乳類159種、爬虫類99種、両生類140種、魚類210種が生息しています。昆虫類も非常に多様で、蝶は1307種、蟻は300種、トンボは136種、鞘翅目は650種も確認されています。特筆すべきは、サラオと呼ばれる場所の土壌には、動物たちの栄養源となるアルカリ性成分や解毒作用のある物質が豊富に含まれており、動物たちが共存する貴重な場所となっています。

公園の管理と人々の暮らし

マヌー国立公園はペルー国立天然資源協会（INRENA）によって管理されています。公園内での定住生活は制限されており、マチゲンガ人などの先住民族が小集落を形成して暮らしています。彼らの生活は主にマヌー川沿いに集中しており、伝統的な暮らしを守っています。
公園に隣接する保護区では、観光や狩猟、材木伐採などの資源採取が認められています。特にマヌー川下流の地域は、生物圏保護区には含まれますが、国立公園には含まれていません。

研究活動の拠点

マヌー国立公園は、研究活動も盛んに行われています。デューク大学のジョン・ターバラ氏が指導するコチャ・カシュ生物学研究拠点は、熱帯生物学や生態学の研究において最先端の研究拠点として知られています。この拠点では、公園の豊かな生態系を解明するための様々な研究が行われています。

植物相と動物相

公園の植物相は非常に多様で、アマゾン川流域の低地熱帯雨林が40％を占めており、淡水湿地林、三日月湖、ヤシの茂る湿地帯、高地性の雲霧林、草原などが含まれています。動物相も同様に豊かで、オオカワウソ、オオアルマジロ、エンペラータマリン、ノドチャミユビナマケモノ、ジャガー、ピューマ、アンデスネコなど、希少な動物が生息しています。特に、霊長類は13種、ネコ科動物は8種確認されています。

世界遺産としての価値

マヌー国立公園は、その顕著な生態学的価値から、ユネスコの世界遺産に登録されています。登録基準(9)と(10)を満たしており、生態系の進化と発達における重要なプロセスを示す代表的な場所であること、生物多様性の保全にとって重要な自然生息地であることが評価されています。

マヌー国立公園は、その比類なき自然の美しさと生物多様性から、世界中の自然愛好家や研究者にとって、かけがえのない場所となっています。

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