マネー・ピット

マネー・ピット

『マネー・ピット』は、1986年にアメリカ合衆国で製作されたコメディ映画です。当時まだ若手だったトム・ハンクスが主演を務め、後に数々の名作を手掛けるスティーヴン・スピルバーグが製作総指揮として名を連ねています。監督は俳優としても知られるリチャード・ベンジャミンが担当しました。

作品概要

本作の原題『The Money Pit』は直訳すると「金のなる穴」ではなく、「金食い虫」や「金がかかる場所」といった否定的な意味合いを持ちます。物語の中心となるのは、まさにこのタイトルが示すような一軒の家です。見た目は立派な豪邸でありながら、信じられないほど安い価格で売りに出されていた物件に飛びついた若いカップルが、購入後に次々と発覚する想像を絶する欠陥に悪戦苦闘する姿が、ドタバタ劇としてコミカルに描かれます。

あらすじ

若き弁護士ウォルターは、恋人でヴィオラ奏者のアンナと共に、彼女の元夫である指揮者マックスが所有する留守宅に一時的に住んでいました。しかし、マックスが海外から突然帰国することになり、二人は新たな住まいを探さなければならなくなります。

そんな時、二人のもとに驚くほど格安な価格で売りに出されている広壮な邸宅の話が舞い込みます。これはまたとないチャンスと考えた二人は、その魅力的な外観に惹かれ、即座に購入を決意します。引っ越しを済ませ、新しい生活に胸を膨らませていたウォルターとアンナでしたが、彼らが手に入れた家は、文字通り「金食い虫」と呼ぶにふさわしい、想像を絶する欠陥住宅だったのです。床は抜け、階段は崩れ、配管は壊れ、壁は倒壊寸前...。理想の住まいだと思っていた家は、二人にとって悪夢そのものと化します。

この欠陥だらけの家を修繕しようとすればするほど、問題は拡大し、費用はかさむ一方。二人は家との絶え間ない格闘に巻き込まれ、ユーモラスでありながらも時に途方に暮れるような状況に直面します。この家との戦いを通じて、ウォルターとアンナの関係もまた試されることになります。

キャストとスタッフ

主演のトム・ハンクスが主人公ウォルターを演じ、その恋人アンナ役にはコメディエンヌとして人気のシェリー・ロングがキャスティングされています。アンナの元夫マックス役には、『ダイ・ハード』でも印象的な演技を見せたアレクサンドル・ゴドゥノフ、さらにベテラン女優のモーリン・ステイプルトンら実力派俳優たちが脇を固めています。

製作には、製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグとデヴィッド・ガイラー、製作のキャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャルなど、後にハリウッドで重要な役割を果たす面々が関わっています。脚本はデヴィッド・ガイラーが執筆し、音楽はミシェル・コロンビエ、撮影はゴードン・ウィリスが担当しました。

日本語吹替版

日本では、テレビ放送版として1990年1月24日にTBS系列の『水曜ロードショー』で初めて放映されました。その後、2003年10月24日発売のDVDに初めてソフト版の吹替が収録されました。VODサービスでは、2019年にNetflixで初めて配信されています。2021年11月10日に発売された「HDニューマスター日本語吹替W収録版 ブルーレイ」には、このTBS版とソフト版、二つの日本語吹替音声が収録され、ファンにとっては嬉しい仕様となっています。

『マネー・ピット』は、若き日のトム・ハンクスが体当たりの演技を見せる、ドタバタコメディの快作として現在も親しまれています。

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