マハルバル

マハルバル（羅：Maharbal, ポエニ語：𐤌𐤄𐤓𐤁𐤏𐤋）は、第二次ポエニ戦争において、カルタゴの将軍ハンニバルの下で騎兵を率いた人物です。彼の名は、ティトゥス・リウィウスの『ローマ建国史』に登場し、ハンニバルのイタリア進攻における勝利に大きく貢献しました。

ヒミルコの子であるマハルバルは、リウィウスの記録によると、サグントゥム包囲の際にハンニバルが不在の間、指揮権を委ねられました。その後、ハンニバルのイタリア到着後には、ポー川周辺への略奪部隊として派遣され、ティキヌスの戦いを前に急遽呼び戻されています。

ハンニバルは、イタリア進攻の過程で騎兵戦力を強化しており、マハルバルに一定の裁量を与えていました。トラシメヌス湖畔の戦いでは、マハルバルは騎兵隊長ではありませんでしたが、ヒスパニア人散兵を率いてローマ軍の敗残兵を捕虜にするという功績を挙げています。

しかし、マハルバルが最もよく知られているのは、カンナエの戦い後のハンニバルへの進言です。カンナエの戦いでカルタゴ軍が大勝利を収めた後、マハルバルはローマへの即時進軍を進言しました。しかし、ハンニバルはこれを受け入れず、その決定に対し、マハルバルは「ハンニバル、あなたは戦争に勝つ術を知っていても、勝利を活かす術は知らない（Vincere scis, Hannibal; victoria uti nescis）」と言ったと伝えられています。

この言葉は、ハンニバルの戦略に対する痛烈な批判として、後世にまで語り継がれています。マハルバルの進言が受け入れられていれば、ローマの命運はどうなっていたのか、歴史家たちの間で議論が続いています。

マハルバルは、ハンニバルの有能な部下であると同時に、戦略眼を持つ人物として、歴史に名を残しています。彼の進言は、勝利の後の戦略の重要性を示唆するものとして、現代においても教訓として受け継がれています。

参考文献
* Bunbury, Edward Herbert (1867), “Maharbal”, in Smith, William, A Dictionary of Greek and Roman biography and mythology, Boston: Little, Brown and co., p. 905

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