ローマ建国史

ローマ建国史

『ローマ建国史』（ラテン語: Ab Urbe Condita Libri）は、古代ローマの歴史家リウィウスによって紀元前17年頃に著されたとされています。この歴史書は、ローマの建国からアウグストゥス帝による帝政の成立までを網羅的に記述したものです。元々は142巻という膨大な構成でしたが、残念ながら現存しているのはごく一部に過ぎません。

内容

現存しているのは、第1巻から第10巻、そして第21巻から第三次マケドニア戦争を記述した第45巻までです。それ以外の巻は、断片や後世の要約版である「Periochae」のみが残されています。しかし、1772年にはバチカン図書館でパリンプセストの形で第91巻（セルトリウス戦争に関する記述）の断片が約1000語発見され、1986年には第11巻（第三次サムニウム戦争に関する記述）の断片が40語発見されました。これらの発見により、失われた巻の内容についても部分的に復元が進んでいます。

リウィウスは、本書の序章で、ローマの発展を導いた指導者たちの活動を記録し、紀元前1世紀頃からの政治的な混乱の原因となった道徳的な退廃を描くことを目的としていると述べています。彼は読者に対し、ローマの人々がどのように生き、どのような風俗習慣を持ち、どのように領土を拡大し、そしてどのようにして風紀が乱れていったのかを考察することを求めています。

本書では、ロムルスとレムス兄弟によるローマ建国の物語から始まり、ローマ人によるサビニ族の女性の略奪事件、ローマのホラティウス三兄弟とアルバのクリアティウス三兄弟の決闘、ホラティウスの妹とクリアティウス兄弟の一人の恋物語などが語られます。そして、ローマ最初の執政官であるルキウス・ユニウス・ブルトゥスが登場するまでの歴史が語られます。

さらに、カルタゴの将軍ハンニバルがアルプスを越えてローマに侵攻した第二次ポエニ戦争（第一次ポエニ戦争を扱った巻は失われている）や、第三次マケドニア戦争でマケドニア軍が敗北し、ローマの将軍がギリシアの自由を宣言する場面なども描かれています。第三次ポエニ戦争以降の共和制末期から帝政成立に至るまでの巻は現存していませんが、最終巻では紀元前9年の大ドルススの死までが取り上げられていたことがわかっています。

マキャヴェッリの注釈

政治思想家ニッコロ・マキャヴェッリは、この『ローマ建国史』に対する注釈という形で、独自の歴史観を展開し、『ディスコルシ（政略論）』を著しました。このことからも、『ローマ建国史』が後世に与えた影響の大きさがわかります。

書誌情報

以下は、『ローマ建国史』の主な書誌情報です。

Liviusu, Ab Urbe Condita, ed. R. S. Conway & C. F. Walter Oxford, 1951.
リーウィウス『ローマ建国史（上）』鈴木一州訳、岩波文庫、2007年。第1巻から第5巻まで収録（全3冊予定）
リウィウス『ローマ建国以来の歴史1――伝承から歴史へ(1)』岩谷智訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2008年。全14冊予定。第1巻から第2巻まで収録
リウィウス『ローマ建国以来の歴史2――伝承から歴史へ(2)』岩谷智訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2016年。第3巻から第5巻まで収録
リウィウス『ローマ建国以来の歴史3――イタリア半島の征服(1)』毛利晶訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2008年。第6巻から第8巻(～第24章）まで収録
リウィウス『ローマ建国以来の歴史4――イタリア半島の征服(2)』毛利晶訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2014年。第8巻（第25章～）から第10巻まで収録
リウィウス『ローマ建国以来の歴史5――ハンニバル戦争(1)』安井萠訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2014年。第21巻から第22巻まで収録
リウィウス『ローマ建国以来の歴史6――ハンニバル戦争(2)』安井萠訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2020年。第23巻から第25巻まで収録
リウィウス『ローマ建国以来の歴史7. ハンニバル戦争(3)』砂田徹訳 京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2024年。
リウィウス『ローマ建国以来の歴史9――第二次マケドニア戦争、東方諸戦役(1)』吉村忠典・小池和子訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2012年。第31巻から第33巻まで収録
リヴィウス『［抄訳］ローマ建国史（上）』北村良和編訳、PHP研究所、2010年。第1巻から第5巻まで収録
リヴィウス『［抄訳］ローマ建国史（下）』北村良和編訳、PHP研究所、2010年。第21巻から第30巻まで収録
* 元版『ローマ史（1－6）』北村良和訳、秋田印刷製本、2002-07


『ローマ建国史』は、古代ローマの歴史を理解する上で欠かせない重要な文献であり、その詳細な記述は、現代の歴史研究においても重要な資料となっています。

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