マリア・ジョアン・ピレシュ

マリア・ジョアン・ピレシュ：類まれな才能と豊かな音楽性

マリア・ジョアン・ピレシュは、1944年7月23日、ポルトガルで生まれました。現在ブラジルに居住する彼女は、世界的に知られたピアニストとして、その類まれな才能と音楽性で高い評価を得ています。

幼少期からの才能と音楽教育

リスボンで幼少期を過ごしたピレシュは、7歳にしてモーツァルトの協奏曲を公開演奏するなど、早くからその才能を開花させました。9歳時には、ポルトガル政府から若手音楽家に贈られる栄誉ある賞を受賞しています。その後、リスボン大学で作曲、音楽理論、音楽史を学び、西ドイツへと留学。ミュンヘン音楽アカデミーやハノーファーで研鑽を積みました。さらに、伝説的なピアニスト、ヴィルヘルム・ケンプから個人的な指導を受けるなど、恵まれた環境の中で音楽的基礎を築き上げていきました。

国際的な成功と受賞歴

1970年、ブリュッセルで開催されたベートーヴェン生誕200周年記念コンクールで優勝を果たし、国際的なキャリアをスタートさせます。その後、デンオンと契約し、モーツァルトのピアノソナタ全集を録音。しかし、手首の故障により演奏活動を一時中断せざるを得なくなりました。

1980年代に入ると、見事に復活を果たし、ロンドン、ニューヨークと、世界的な舞台でデビュー。1987年には、クラウディオ・アバド指揮のグスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団と共演し、ヨーロッパツアーに参加するなど、その活躍の幅を広げていきました。

室内楽奏者としても高く評価されており、フランス人ヴァイオリニストのオーギュスタン・デュメイとのデュオ、そしてチェリストのジャン・ワンを加えたトリオでの演奏活動も精力的に行っています。これらの活動を通して、数々の賞を受賞。1990年には、モーツァルトのピアノソナタ集の録音で国際ディスク・グランプリ大賞を受賞するなど、輝かしい実績を残しています。ショパン、バッハ、ブラームスの作品集、さらにはデュメイとの共演によるヴァイオリンソナタ集など、幅広いレパートリーで高い評価を得ています。

教育者としての活動と現在

ピレシュは、世界中でマスタークラスを開き、後進の育成にも力を注いでいます。フランス語と英語を用いて指導を行う彼女は、音楽教育にも情熱を注いでいることがわかります。さらに、ポルトガルの地方における芸術センターの振興にも取り組むなど、多角的に活動しています。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ボストン交響楽団、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団など、世界の一流オーケストラとの共演も多いです。近年も、主要な音楽祭への出演や、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演など、精力的な活動を続けており、2024年には80歳の誕生日を祝うコンサートが開催されました。

日本における人気と名前表記

日本では長年、「マリア・ジョアオ・ピリス」や「マリア・ジョアン・ピリス」といった表記が一般的でしたが、近年では「マリア・ジョアン・ピレシュ」という表記が主流になりつつあります。しかし、いまだに表記が統一されていない点が現状です。

親日家としても知られるピレシュは、日本でも高い人気を誇り、日本の聴衆を魅了し続けています。その卓越した演奏技術と深い音楽性、そして教育者としての情熱は、これからも多くの音楽愛好家を感動させ続けることでしょう。

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