マリア・テレジア軍事勲章

マリア・テレジア軍事勲章の概要

マリア・テレジア軍事勲章（独: Militär-Maria-Theresia-Orden）は、ハプスブルク帝国において最も権威ある軍事勲章として位置付けられています。この勲章は、オーストリアの女帝マリア・テレジアによって設立され、特に軍事的な功績を評価するための制度として重要な役割を果たしてきました。

歴史的背景

マリア・テレジアは、18世紀中頃、プロイセンとの軍事対決に備えて一連の軍事改革を実施していました。この改革の一環として、彼女は新たな叙勲制度の必要性を認識し、七年戦争の初期におけるオーストリア軍の成功—特にコリンの戦いでの勝利—を受けてこの勲章の制定を決定しました。

この勲章は、受章者の身分や民族にかかわらず、純粋に軍事上の業績によって授与されることを目的としていました。これは、当時のオーストリア軍における不適切な評価体制を振り返った上での改良策でもありました。ただし、初回の受章者に関しては、女帝の意向によって改革の趣旨が無視されることもありました。

勲章の種類と授与

マリア・テレジア軍事勲章は当初、騎士章と大十字章の2種類から始まり、後に司令官十字章も追加されました。受賞することで、受章者はマリア・テレジア騎士団の一員となります。騎士団の長はマリア・テレジアの夫である神聖ローマ皇帝フランツであり、授与式では彼から叙勲を受けましたが、フランツ自身は受章者ではありませんでした。なお、受章することで貴族の称号が与えられるものではありません。

授与式は通常「叙任式」と呼ばれ、1758年5月7日から1931年10月3日までの間に計195回にわたって行われました。この間、世界大戦や様々な歴史的背景において多くの受章者が誕生しました。

第一次世界大戦と勲章

第一次世界大戦においては、マリア・テレジア軍事勲章の受章者数はこれまでの累計と同程度に達しました。この戦争中には、騎士章を制服の第二ボタンに吊り下げて着用する習慣が生まれ、勲章の象徴的な意味合いも深まりました。

主な受章者

歴史の中で、この勲章を授与された著名な人物には、カール・アレクサンダー・フォン・ロートリンゲン、レオポルト・フォン・ダウン、ヨーゼフ・ラデツキー、ゲオルク・フォン・トラップなどがいます。これらの受章者たちは、各々の時代においてオーストリア軍の発展において重要な役割を果たしました。

結論

マリア・テレジア軍事勲章は、その歴史を通じてオーストリアの軍人に対する評価や栄誉の象徴となり、今日においてもその重要性は色褪せることはありません。この勲章が持つ意義や歴史的背景を理解することは、オーストリアの軍事史を学ぶ上で欠かせない要素と言えるでしょう。

もう一度検索