ゲオルク・フォン・トラップ

ゲオルク・フォン・トラップの生涯

ゲオルク・ルートヴィヒ・フォン・トラップ（Georg Ludwig von Trapp）は、1880年4月4日にオーストリア＝ハンガリー帝国（現在のクロアチア）で生まれました。彼はオーストリア海軍の軍人であり、最終階級は少佐でした。第一次世界大戦では潜水艦艦長として活躍し、数々の武勲を立て、国民的英雄として称えられました。

生い立ちと海軍入隊

ゲオルクは、海軍中佐であった父アウグストを幼くして亡くし、一家はトリエステやプーラに移り住みました。1894年に海軍兵学校に入学し、卒業後は海兵隊少尉に任官。1900年には義和団の乱に出動し、その勇敢さを認められ勲章を授与されました。その後、航海科に転科し、潜水艦隊に配属されました。

結婚と第一次世界大戦

1911年、ゲオルクはアガーテ・ゴベルチナ・ホワイトヘッドと結婚しました。アガーテは、魚雷を発明した技術者の孫であり、裕福な家庭の出身でした。二人の間には、ルーペルト、アガーテ、マリーア・フランツィスカ、ウェルナー、ヘートウィクの5人の子供が生まれました。第一次世界大戦が勃発すると、ゲオルクは魚雷艇の艦長として従軍し、その後潜水艦U-5の艦長として、敵艦を撃沈するなどの戦果を上げました。彼は数々の勲章を授与され、その武勇は広く知れ渡りました。

退役と再婚

第一次世界大戦後、オーストリア海軍は縮小され、ゲオルクは1919年に退役しました。その後、水運会社を設立しましたが、1922年に妻アガーテを猩紅熱で亡くしました。1925年、一家はザルツブルク郊外に引っ越し、1926年、ゲオルクは家庭教師としてマリア・クチェラを迎えました。翌年、二人は結婚し、ゲオルクには6人の子供に加え、マリアとの間にローズマリー、エレオノーレ、ヨーハネスの3人の子供が生まれ、大家族となりました。

トラップ室内聖歌隊

1933年、オーストリアの金融恐慌により財産を失ったゲオルクに代わり、マリアは子供たちと歌を披露し始めました。一家の歌声は、ザルツブルク大司教座から派遣された神父フランツ・ヴァスナーの指導により、洗練されていきました。1935年には音楽コンクールで優勝し、「トラップ室内聖歌隊」としてヨーロッパ各地でコンサートツアーを行うようになりました。

オーストリア併合と亡命

1938年、オーストリアがナチス・ドイツに併合されると、ゲオルクはナチスへの協力を拒否しました。家族の安全のため、一家はアメリカに亡命することを決意。神父フランツ・ヴァスナーと共に、アメリカへ向かいました。

アメリカでの生活と晩年

アメリカに渡ったトラップ一家は、各地でコンサート活動を行い、1941年にはバーモント州に農場を購入しました。1942年、長男ルーペルトと次男ウェルナーは兵役に志願し、イタリア戦線に従軍しました。1947年、ゲオルクは肺がんのため、67歳で亡くなりました。

サウンド・オブ・ミュージックと実際のゲオルク

トラップ一家の物語は、ミュージカルや映画『サウンド・オブ・ミュージック』として世界的に有名になりました。しかし、ゲオルクは映画で厳格な父親として描かれたことに不満を持っていました。実際には、彼は優しく愛情深い父親であり、現実と異なる描かれ方を残念に思っていたそうです。また、ゲオルクの海軍時代の同僚は、映画での彼の描かれ方に怒りを覚えたというエピソードも残っています。

ゲオルク・フォン・トラップは、軍人、夫、父親、そして音楽家として、波乱に満ちた人生を歩みました。彼の人生は、多くの人々に感動と勇気を与え続けています。

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