マリア・パヴロヴナ (ザクセン＝ヴァイマル＝アイゼナハ大公妃)

マリア・パヴロヴナ：芸術と科学を愛した大公妃

マリア・パヴロヴナ（1786年-1859年）は、ロシア皇帝パーヴェル1世と皇后マリア・フョードロヴナの三女としてサンクトペテルブルクに生まれました。幼少期はパヴロフスクで過ごし、祖母であるエカチェリーナ2世からも注目を集めました。ピアノの才能に恵まれ、イタリアの作曲家ジュゼッペ・サルティに師事するなど、音楽教育にも力を入れていました。

しかし、幼少期の天然痘の発症により容貌に影響が出たと言われています。それでも、マリア・パヴロヴナは並外れた知性と幅広い興味を示しました。芸術のみならず、科学への関心も深く、その才能は周囲を魅了しました。

1804年、マリア・パヴロヴナはザクセン＝ヴァイマル＝アイゼナハ大公カール・フリードリヒと結婚。サンクトペテルブルクで9ヶ月を過ごした後、ヴァイマルへと移り住みました。彼女は、文化的にやや遅れていると見られていたヴァイマル公国に、豊かな文化をもたらすことに貢献します。

マリア・パヴロヴナは、詩人ヴァシーリー・ジュコーフスキーと生涯に渡る文通を続け、劇作家・詩人フリードリヒ・フォン・シラーからは、彼の遺作となる詩を献呈されました。さらに、彼女はイェーナ大学に10の学科を設立し、著名な科学者アレクサンダー・フォン・フンボルトを招聘するなど、教育面でも尽力しました。

晩年には、作曲家フランツ・リストを宮廷に迎えました。1850年には、リストの指揮の下、リヒャルト・ワーグナーのオペラ『ローエングリン』がヴァイマルで初演されました。リストのピアノ曲『コンソレーション』は、マリア・パヴロヴナが作曲した主題を一部に用いており、彼女に献呈されています。これらの活動を通して、マリア・パヴロヴナはヴァイマル公国の文化水準を飛躍的に向上させる役割を果たしました。

1853年に夫カール・フリードリヒが亡くなると、彼女は公的な場から身を退きます。最後のロシア訪問は、1855年の甥にあたるアレクサンドル2世の戴冠式への出席でした。1859年、ヴァイマルで亡くなり、夫カール・フリードリヒが眠る大公家墓所内に建造されたロシア正教会聖堂に埋葬されました。

マリア・パヴロヴナは、大公妃としての役割にとどまらず、芸術と科学を愛し、教育にも情熱を注いだ、まさに時代の先駆者と言える人物でした。その活動は、ヴァイマル公国の文化発展に大きな影響を与え、今日まで語り継がれる偉大な功績となっています。彼女の生涯は、単なる貴族の物語ではなく、文化と知性の発展に貢献した一人の女性としての物語なのです。

子女

パウル・アレクサンダー（1805年-1806年）
マリー・ルイーゼ（1808年-1877年） - プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世の三男フリードリヒ・カールと結婚
アウグスタ（1811年-1890年） - ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世と結婚
カール・アレクサンダー（1818年-1901年） - ザクセン＝ヴァイマル＝アイゼナハ大公

もう一度検索