マリア・マルガレータ・キルヒ

マリア・マルガレータ・キルヒの生涯と業績

マリア・マルガレータ・キルヒ（1670年-1720年）は、ドイツの女性天文学者として知られています。彼女は夫のゴットフリート・キルヒと共に天文学の分野で活躍しましたが、当時の社会において女性が科学に従事することは極めて困難でした。本文では、マリアの生涯、彼女の業績、そして彼女が直面した困難について詳述します。

幼少期と教育

マリアは1670年にライプツィヒ近郊のパニッシュで生まれ、父はルター派の牧師でした。幼少期から父から天文学を学ぶ機会がありましたが、13歳のときに両親を失い、叔父に引き取られました。その後、隣町の天文学者クリストフ・アーノルドの元で研究を手伝いながら自身の学問を深めました。アーノルドの家には多くの学者が集まり、その中には後に夫となるゴットフリート・キルヒもいました。

結婚と共同研究

1686年ごろ、マリアとゴットフリートは初めて出会い、1692年に結婚しました。マリアは結婚後も天文学に従事し続けましたが、当時は女性が正式に天文学者として活動することは難しい時代でした。ゴットフリートは年齢が30歳上であり、彼にとっても家事や育児を助けながら天文学を支える妻は心強い存在でした。2人はブランデンブルクに住み、ゴットフリートがプロイセン科学アカデミーで天文学者として活動する際、マリアも非公式に助手として働きました。

笑顔の裏にあった苦悩

1702年、マリアは新発見の彗星C/1702 H1を観測し、その功績は後にゴットフリートによって発表されましたが、彼の名前だけが記され、マリアの努力は多くの人に知られることはありませんでした。この不遇の評価は、マリアの後のキャリアにも影を落とすことになります。彼女とゴットフリートは、天体観測のほかに暦の製作にも関与しました。

夫の死後の苦境

1710年、夫のゴットフリートが死去した後、マリアは自身と子どもの生活を支えるためにアカデミーでの職を求めましたが、男女の不平等により門前払いを食らいます。彼女は16世紀以来のギルド制度に支えられた天文学者としての地位を主張しましたが、アカデミーの理事たちは女性が天文学に関わることに対し消極的でした。結局、マリアはアカデミーを去らざるを得なくなります。

天文台の責任者として

マリアはその後、別の天文台の責任者となり、ここで新たな観測と暦の製作を続け、学生たちを指導しました。しかし、2年後に上司であるクロージク男爵が死去したため、再び新たな地位を求めることになります。数学教授の助手を経て、ヨハネス・ヘヴェリウスの遺族に雇われ、天文台で働き続けましたが、アカデミーでの女性天文学者としての役割は依然として存在しませんでした。

息子の支援と晩年

息子クリストフリートがアカデミーに選ばれると、マリアは再度その場での仕事を求めました。しかし、300年以上も前の制度の影響を受け、マリアは退去を促され、その後は自宅での観測活動を余儀なくされました。

死後の評価

マリア・マルガレータ・キルヒは、近代天文学に多大な影響を与えたにもかかわらず、その生涯にわたり多くの困難に直面しました。彼女の名前は小惑星に刻まれ、科学の歴史において女性の存在を示す重要な指標となっています。彼女の業績は一部で評価されたものの、彼女自身の苦労と不遇の歴史は科学史の中で語り継がれるべき重要なテーマです。

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