マリオ・イリエン

マリオ・イリエン：モータースポーツ史に名を刻むエンジニアの軌跡

マリオ・イリエンは、レーシングカー用エンジンの開発において世界的な名声を誇るエンジニアです。1949年スイス生まれ。幼少期からモータースポーツに魅せられ、その情熱を生涯の仕事へと繋げました。

モータースポーツへの道

スイスでのモータースポーツ禁止令にも関わらず、イリエンは若き日にF1ドライバーだったヨアキム・ボニエと出会い、強い影響を受けます。この出会いが、彼の将来の進路を決定づけることになります。製図技師としての訓練を経て、1971年、憧れのボニエの下でモータースポーツ業界でのキャリアをスタートさせました。しかし、翌年のル・マン24時間レースでボニエが事故死したことで、大きな悲しみを経験します。

その後、フレッド・スタルダーのレーシングチームに身を寄せ、シムカ・クライスラーエンジンのチューニングを通して、最初のエンジン設計に携わりました。より専門的な知識を追求するため、1973年にはビール工科大学に入学し、機械工学の学位を取得。卒業後はスイスの軍用装甲車両メーカーでディーゼルエンジンの設計に従事しました。

コスワース時代と独立

モータースポーツへの情熱を捨てきれなかったイリエンは、1979年、コスワースに入社。F1のDFYエンジンやフォード・シエラRSコスワースのエンジン開発に貢献しました。しかし、コスワースの開発体制に不満を抱き、独立を決意します。

イルモアエンジニアリングの設立と成功

コスワース時代の同僚、ポール・モーガンと共に、1984年にイルモア・エンジニアリングを設立。ロジャー・ペンスキーやゼネラルモーターズからの支援を受け、インディカーシリーズに参戦。イリエンの設計によるシボレーエンジン265Aは、1987年からインディ500で6連勝を達成するなど、大きな成功を収めました。

F1への挑戦

インディカーでの成功を背景に、1989年にはF1への進出を果たします。レイトンハウスへのエンジン供給を経て、ザウバー、そしてダイムラー・ベンツ（メルセデス）との協業へと発展していきました。軽量で高性能なエンジンは高い評価を受け、マクラーレン・メルセデスは1998年と1999年にF1世界選手権タイトルを獲得。イリエンの技術力はF1界でも認められました。

ダイムラー・ベンツとの協業と独立

2001年にモーガンが死去すると、ダイムラークライスラーはイルモアを完全子会社化しました。しかし、イリエンは2005年にイルモアを独立させ、新たなスタートを切ります。

独立後の活動

独立後のイルモアはインディカーでの事業を継続し、MotoGPやF1への技術支援なども行っています。現在も、インディカー用エンジンの開発、ハイブリッドシステムの開発など、最先端技術の開発に携わっています。

マリオ・イリエンという人物像

イリエンは、エンジン設計に並々ならぬ情熱を注ぐ人物として知られています。没頭する際は1日18時間作業することもあり、徹底したこだわりを持つ一方で、娘と北京・パリ・モーターチャレンジに参戦するなど、多様な一面も持ち合わせています。

イリエンが残した足跡

マリオ・イリエンは、単なるエンジニアではありません。彼の技術力と情熱は、モータースポーツの歴史に大きな影響を与え、数々の伝説的な勝利を生み出しました。彼の設計したエンジンは、世界中のレースファンに感動と興奮を与え続けています。今後も、彼の革新的な技術がモータースポーツ界を牽引していくことでしょう。彼の功績は、後世のエンジニアたちに長く語り継がれるでしょう。

もう一度検索