マリツァ・サヤレロ

マリツァ・サヤレロ・フェルナンデス（Maritza Sayalero Fernández）は、ベネズエラ出身の著名なモデルであり、1979年度のミス・ユニバース世界大会優勝者です。1961年2月16日にベネズエラの首都カラカスで、フランシスコ・サヤレロ氏とグロリア・フェルナンデス氏の間に生を受けました。

経歴

彼女はベネズエラ中央大学に進学し、建築学を学び始めましたが、わずか1学期で大学を離れました。その後の進路としてモデルの道を選び、1979年 5月16日に開催されたミス・ベネズエラ1979で栄冠を勝ち取ります。この優勝によって、同年のミス・ユニバース世界大会への出場資格を得ました。

ミス・ベネズエラの舞台裏

マリツァが優勝した1979年のミス・ベネズエラ大会は、後にも語り継がれる波乱の展開となりました。最終結果発表の際、第2位と発表された予定であったマリア・フェルナンダ・ラミレス氏が結果を受け入れられず、その場で授与されたサッシュを引き裂くという前代未聞の行動に出ました。この行為により、彼女は即座に失格となり、ミス・インターナショナルへの出場資格も失いました。さらに会場は騒然となり、彼女の家族が審査員席に詰め寄り、関係者に暴力を振るう事態にまで発展したのです。

また、この大会で第1位ファイナリストとなったタチアナ・カポーテ氏も、ミス・ワールド1979への出場中に予選の水着審査で胸の一部が露出し、これを意図的なものと判断されて失格となりました。これはベネズエラ代表が国際的なミスコンで失格となった唯一の例であると言われています。

ミス・ユニバースでの栄光と波乱

1979年 7月20日、オーストラリアのパースで開催されたミス・ユニバース世界大会で、マリツァ・サヤレロは世界各国の代表を抑えて優勝を飾りました。これはベネズエラ代表としては史上初であり、また南米の混血（クレオール）の出身者としても初の快挙でした。彼女はその魅力的な姿容、優れた体格、そして親しみやすい人柄で審査員や観客を魅了したと評されています。

この大会に関連して、いくつかの特筆すべき出来事がありました。まず、マリツァはミス・ユニバース受賞者として初めて、美容整形を受けていたことを公然と認めた人物として知られています。彼女を高く評価していたベネズエラの美容コンサルタント、オスメル・ソウサ氏は、彼女の大きな鼻を唯一の欠点と指摘していたとされます。

また、大会開催時期にはアメリカの宇宙ステーション「スカイラブ」が地球に落下する出来事があり、オーストラリアにも破片が到達。比較的大きな破片が会場に展示されるという珍事もありました。

そして、最も劇的な出来事は、彼女の戴冠式中に発生しました。世界一の栄冠に輝いたマリツァを祝福しようと、多くのカメラマンやレポーターがステージに殺到した結果、ステージの一部が重みに耐えきれず崩落。複数のミスが穴に落下する事態となりました。マルタ代表とトルコ代表は負傷し病院へ搬送されるほどの怪我を負いました。この混乱の中、マリツァは就いたばかりの王座から手を伸ばし、落下しかけていたコロンビア代表のアナ・ミレナ・パラ・トゥルバイ氏を救い出し、彼女は落下を免れたのです。

ミス・ユニバースの賞品には映画のオーディションを受ける権利も含まれていましたが、マリツァはこれを行使せず、モデリングのテストを受けることを選択しました。

その後

ミス・ユニバースとしての任期を終えた後、マリツァは私生活でも新たな章を迎えました。1980年 12月6日、メキシコの著名なテニス選手であったラウル・ラミレス氏と結婚。二人の間には3人の子供が生まれました。現在は夫と共にメキシコのバハ・カリフォルニア州エンセナーダに居住しています。

2010年には、テレビドラマ「La Banda」に出演し、実の息子であるダニエル・ラミレス・サヤレロ氏と親子役で共演を果たしました。

人物

マリツァ・サヤレロにはジャーナリストとして活動した姉妹、ナタリア・サヤレロ氏（1967年-2016年）がいます。また、スペインの伝説的な女優・歌手であるサリタ・モンティエル氏は、彼女の母親のいとこにあたる親戚です。

マリツァ・サヤレロは、その輝かしい優勝だけでなく、ミスコンの舞台裏で起きた数々のエピソードによって、今なお多くの人々の記憶に残るベネズエラのアイコンの一人です。

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