マリンカの戦い (2022年-2023年)

マリンカの戦い（2022年～2023年）

2022年から2023年にかけて、ウクライナのドネツィク州マリンカで発生した、ウクライナ軍とロシア軍、及び親ロシア派分離主義勢力との戦闘です。この戦いは、ロシアによるウクライナ侵攻の中で、最も激しい市街戦の一つとなりました。長期間にわたる戦闘により、マリンカの都市機能は完全に破壊され、市民は避難を余儀なくされました。この記事では、この戦いの経緯、背景、人道への影響を詳細に解説します。

背景

マリンカは、2014年のウクライナ紛争開始以来、ウクライナ軍が支配していた最前線の都市でした。戦略的に重要な位置にあり、ウクライナの防衛線における要衝とされていました。ロシア軍は、この地域に強固な要塞を構築し、地下通路で連結された強靭な防御システムを形成していました。2015年には、大規模な戦闘が発生しており、親ロシア派の攻撃をウクライナ軍が撃退しています。

戦闘の経過

初期の砲撃

2022年2月17日、マリンカへの砲撃が始まり、民間人にも被害が出ました。その後、砲撃は激化し、2月19日には多数の飛翔体が記録されています。本格的なロシアの侵攻が始まった2月25日には、ドネツク市周辺で123件の爆発が観測されました。3月には、ロシア軍が白リン弾や焼夷弾を使用し、火災が発生しています。

ロシアの初期攻勢

3月17日、ロシア国防省はDPR軍がマリンカを占領したと発表しましたが、4月19日にはウクライナ軍が奪還しています。その後も戦闘は続き、5月にはマリウポリ陥落後のロシア軍の主力がドンバス地方に移り、マリンカもその攻撃目標となりました。7月にはロシア軍がウクライナ軍の戦線を突破しようとしましたが、失敗しています。

2022年冬から2023年夏の攻勢

2022年末までに、マリンカとその周辺地域は「居住不可能」な状態となりました。戦闘は激化し、建物はほとんど破壊され、兵士たちは瓦礫や地下室から戦う状況でした。2023年1月には、ウクライナ軍がロシア軍の歩兵攻撃を撃退していますが、2月には激戦が続き、ロシア軍の冬季攻勢は決定的な成果を上げることができませんでした。

最終攻勢と陥落

2023年10月、ロシア軍は東部戦線で新たな攻勢を開始し、マリンカへの攻撃を強化しました。11月には、激しい陣地戦が続き、ロシア軍はドローンを多数投入しました。12月1日、ロシア軍はマリンカの大部分を支配下に置いたと見られていましたが、ウクライナ軍も市西端で抵抗を続けました。12月25日、ロシア国防相はマリンカを完全制圧したと発表しましたが、ウクライナ軍はこれを否定。翌日、ウクライナ軍総司令官はマリンカからの撤退を認めました。戦闘による破壊が激しく、市内に留まるコストが大きくなりすぎたため、郊外に新たな防衛線を構築することになりました。

人道への影響と戦場の状況

マリンカは、戦闘によって完全に破壊されました。市庁舎、教会、文化センター、学校など、すべての建物が被害を受け、居住不可能な状態となりました。2022年11月までに、市内の住民は全員避難しました。ロシア国防相は、マリンカの占領によって、ドネツク市への砲撃が減少するだろうと述べています。

分析

ISW（戦争研究所）は、マリンカの占領がロシア軍にもたらす戦術的利益は限定的だと分析しています。マリンカは都市インフラが破壊されており、安全な作戦拠点とはなりません。さらに、ウクライナ軍が市外に新たな防御線を構築したため、今後の進撃は困難となるでしょう。軍事専門家は、マリンカの喪失がウクライナ軍に作戦上および戦術上の懸念をもたらすと指摘する一方で、ロシア軍の攻撃能力を著しく損耗させたとも述べています。ニューヨーク・タイムズ紙は、マリンカの占領が、バフムート以来のロシア軍による最大の領土進出であると報じました。

まとめ

マリンカの戦いは、2022年から2023年にかけて繰り広げられた、ウクライナ戦争の中でも特に激しい戦闘の一つでした。都市は完全に破壊され、多くの犠牲者が出ました。この戦いの教訓と影響は、今後の戦争のあり方を考える上で重要な意味を持つでしょう。

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