焼夷弾

焼夷弾とは

焼夷弾（しょういだん、英語: incendiary bomb）は、焼夷剤を内部に搭載した兵器で、対象を直接破壊するのではなく、火災を引き起こすことを目的としています。一般的な爆弾は爆風や飛散する破片で攻撃対象を破壊しますが、焼夷弾はその名の通り、着火剤の燃焼によって目標に火を付け焼き払うのです。この性質から、焼夷弾は火災を引き起こす兵器とみなされ、特に都市空襲や戦争における非戦闘員への影響が問題視されています。

焼夷剤の種類

焼夷弾には、使用される焼夷剤の種類によっていくつかの分類が存在します。

テルミット焼夷弾

テルミット反応を利用した焼夷弾です。特にエレクトロン焼夷弾はテルミットの燃焼によってマグネシウム合金に着火し、燃焼効果を高めます。このタイプの弾は、第二次世界大戦中に特にドイツへの空襲で広く使用されました。

油脂焼夷弾

油脂を基にした焼夷剤を使った弾で、ナフサや重油などの石油製品も含まれます。ナパーム弾は、その代表的な存在であり、戦争において多くの人的被害を引き起こしました。

黄燐焼夷弾

自然発火を利用する焼夷弾です。黄燐（白燐）を使用しており、発火後に広範囲にわたり影響を及ぼす成分が放出されることで、化学的な被害も懸念されています。

その他の焼夷弾

• - 火炎瓶: 簡易に製造できる焼夷弾で、油脂を充填したガラス瓶を投擲する形で使用されます。特に第二次世界大戦中に多く使用されましたが、安全性の観点から危険が伴います。
• - 焼玉式焼夷弾: 赤熱した砲弾を使用し、その熱で焼夷効果を起こす古典的な形式の弾です。
• - 徹甲焼夷弾: 徹甲弾の機能と焼夷弾の機能を併せ持ち、敵の装甲を貫通し内部から燃焼させます。

被害の種類

焼夷弾によって引き起こされる影響は多岐にわたります。

火災

焼夷弾の使用によって起こる火災は甚大な被害をもたらします。特に大量に使用されることで、火災が広がり酸欠や一酸化炭素中毒による窒息死が多数報告されています。

化学的な被害

黄燐焼夷弾から放出される煙や燃焼ガスが皮膚や呼吸器に深刻な影響を与えることが懸念されています。気化したリンは皮膚を侵食し、呼吸器系に対しても有害です。

人体への影響

焼夷弾による直接的な被害も甚大です。特にクラスター型焼夷弾は、多数の小型焼夷弾が降り注ぎ、民間人に即死的な被害をもたらします。

不発弾の危険

黄燐焼夷弾の不発弾が事故を引き起こすことがあります。地中に埋まった不発弾が発火することで、新たな危険を生むケースもあり、特に日本やフィリピンでの過去の事例が教訓となっています。

規制の動向

特定通常兵器使用禁止制限条約の附属議定書3では、民間人や人口密集地付近での焼夷弾使用が禁止されています。しかし、これに署名していない国も存在し、国際的な議論が続いています。

第二次世界大戦における使用例

アメリカ軍は、ナパーム弾やテルミット弾、黄燐焼夷弾などを使用しました。特にM74六角焼夷弾は、その強力な焼夷効果により、青森大空襲では甚大な被害を引き起こしました。

結論

焼夷弾は戦争の中で起こり得る非人道的な被害を象徴する兵器です。その使用には規制が求められ、多くの国々がその影響を議論しています。戦争の悲劇を軽減するためには、こうした兵器の扱いについて真剣に考える必要があります。

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