マルキーズ諸島

マルキーズ諸島：南太平洋の秘境、世界遺産に輝く楽園

マルキーズ諸島は、フランス領ポリネシアに位置する、南太平洋の魅惑的な群島です。ヌクヒバ島やヒバオア島など、12の火山島と1つの環礁「Motu One」から構成され、タヒチ島から北東へ約1,500キロメートル離れた場所に点在しています。サンゴ礁が少なく、険しい海岸線が特徴的なこの地は、世界のどの大陸からも遠く離れ、まさに秘境と言えるでしょう。アメリカ大陸のカリフォルニアまで約5,500キロメートル、ニュージーランドまで約5,800キロメートル、そして日本からは約9,800キロメートルもの距離があります。

ポリネシア文化の揺籃の地

マルキーズ諸島は、ポリネシア民族にとって重要な歴史的意義を持つ場所です。先住民の言葉では「人間の土地」を意味する「Te Fenua Enana」（北マルキーズ語）または「Te Fenua Enata」（南マルキーズ語）と呼ばれ、約2,000年前、台湾島周辺から南下したポリネシア人の祖先が、長旅の末にたどり着いたとされています。彼らは、この地を拠点に、トゥアモトゥ諸島、ソシエテ諸島、イースター島、ハワイ、そしてニュージーランドへと航海を続け、広大なポリネシア三角圏の文化圏を築き上げました。

西洋との出会い、そして苦難の時代

西洋人による最初の到達は、1595年7月、スペインの探検家アルバロ・デ・メンダーニャ・デ・ネイラによるものでした。彼は当時のペルー副王夫人にちなんで「マルケサス諸島」と名付けました。1842年にはフランス領となり、その後、欧米人の捕鯨船の到来によって、先住民は暴力や伝染病などの苦難に見舞われ、人口は激減しました。19世紀末には約10万人いた人口は、1920年代には約2,000人にまで減少したと言われています。

現代のマルキーズ諸島

現在、マルキーズ諸島の総面積は約1,240平方キロメートル、人口は約8,064人です。主な集落はヌクヒバ島のタイオハエと、ヒバオア島のアトアナです。経済活動の中心は、コプラ、バニラ、タバコの輸出となっています。

この地は、多くの芸術家や作家にもインスピレーションを与えてきました。画家ポール・ゴーギャンはヒバオア島で生涯を終え、シャンソン歌手のジャック・ブレルも晩年をこの地で過ごし、ゴーギャンの近くで眠っています。また、ハーマン・メルヴィルの小説『タイピー』は、ヌクヒバ島のタイピー渓谷を舞台としています。

マルキーズ諸島の島々

マルキーズ諸島は、北部と南部に分けられ、それぞれに独特の景観を持つ島々が点在しています。主な島々は、北部にはMotu One、ハトゥタア島、エイアオ島、Motu Iti、ヌク・ヒバ島、ウア・フカ島、ウア・ポウ島、南部にはファトゥ・フク島、ヒバ・オア島、タフアタ島、Moho Tani、ファトゥ・ヒバ島、Motu Naoなどがあります。

世界遺産登録

2024年、マルキーズ諸島はユネスコの世界遺産に登録されました。フランスの世界遺産としては2件目の複合遺産となり、その文化的・自然的重要性が世界的に認められました。登録基準としては、(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠、(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの、(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの、(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの、(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるものなどが挙げられます。

マルキーズ諸島は、その手つかずの自然と豊かな歴史、そして独特の文化を融合させた、まさにかけがえのない場所です。これからも、この美しい楽園が未来へと受け継がれていくことを願っています。

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