マルクス・マニリウス

マルクス・マニリウスとその作品『アストロノミカ』

古代ローマの詩人、マルクス・マニリウスは、1世紀ごろに生まれたとされ、占星術に関連した教訓を詩形式で表現した『アストロノミカ』の著者として知られています。彼の作品は全5巻からなり、古代の占星術の知見を融合させながら、人間の人生と宇宙との関係を探求しています。

人物と著作の背景

マニリウスに関する詳細な記録は乏しく、他の古代作家たちからの言及は見当たらないため、彼の実際の人生や活動については多くの謎が残っていますが、詩の内容から彼がアウグストゥスやティベリウスの時代に生きていたと考えられています。彼はローマ市民であり、地域的な文脈を持ちながらも、占星術の洗練された理論を取り入れていたと言われています。

興味深いことに、彼の作品は他の著作と比較すると独自性が際立ち、多くの占星術や天文学に関する知識を反映しています。彼が参考にしたとされる古代の作家たちからの影響もあり、熱意や独創性を持って主題を表現しています。文体は特異な癖を見せることがあっても、形式としての韻文は非常に整っています。

コンスタンティヌスの時代には、彼の作品と多くの類似点を持っているユリウス・フィルミクス・マテルヌスが登場します。フィルミクスは彼の著作から影響を受け、自身の作品を通じてマニリウスの思想を広めたと考えられます。特に、詩の中で扱われる出来事の中には、ウァルスの大敗を含む歴史的な出来事も見られ、マニリウスがその時代の出来事を意識していたことが窺えます。

作品の伝承と再発見

『アストロノミカ』は10世紀から11世紀にかけて修道院に保存されていました。最初の手稿は現在のブリュッセルにあり、もう一つはライプツィヒの図書館に保管されていました。1416年、ポッジョ・ブラッチョリーニによってコンスタンツ公会議の際に再発見されたことが記されています。この出来事をきっかけに、マニリウスの詩は再び注目を集めることになりました。

初版は1473年ごろにニュルンベルクで出版され、その後、さまざまな学者によって校訂が行われました。特に1739年のリチャード・ベントレーによる版は評価が高く、近代においてはA・E・ハウスマンの版が信頼できるものとして広く受け入れられています。

マニリウスの影響と後世への影響

マニリウスは、12の星座にそれぞれ神々を割り当てたことでも知られています。この配列は古代の占星術における重要な指標となり、後の文化や美術に影響を与えました。具体的には、彼が定めた星座と神々の対応は、15世紀の画家たちによる作品にも採用されるほどでした。

また、彼の詩から派生した占星術の理論は、後世の占星術師や学者たちに影響を与え、占星術の発展に寄与しました。マニリウスの視点は、占星術の理念を新たに構築するきっかけとなったのです。

関連文献の紹介

彼の作品は現代に至るまで翻訳され続け、多くの研究が行われています。日本語訳においては、1993年に出版された有田忠郎の『占星術または天の聖なる学』や、2024年に出版を予定する竹下哲文による『アストロノミカ』が挙げられます。また、解説書としては進藤英樹訳の『異教的ルネサンス』や竹下哲文の『詩の中の宇宙』などがあり、いずれもマニリウスの作品の理解を深めるための重要な資料となっています。

総じて、マルクス・マニリウスと彼の作品『アストロノミカ』は、古代ローマにおける占星術の重要性を示すと同時に、後世の文化や科学に与えた影響も計り知れません。

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