マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分

マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分

ウラジーミル・レーニンが1913年に著した論文「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」は、マルクス主義の理論的基礎を解説した重要な文献です。この論文は、レーニンがクラクフ滞在中に執筆し、ボリシェビキの合法啓蒙雑誌『プロスヴェチェーニエ』に掲載されました。

概要

レーニンは、マルクス主義が人類の知識の集大成であるという観点から、その源泉と構成要素を明らかにしようとしました。論文は序論に続き、哲学、経済学、社会主義理論の三つの章で構成されています。レーニンは、マルクス主義の各要素が、それぞれドイツ哲学、イギリス経済学、フランス社会主義という歴史的な思想潮流から継承・発展したと論じました。

三つの源泉と三つの構成部分

レーニンは、マルクス主義の三つの源泉を具体的に、ドイツ哲学からは弁証法的唯物論を、イギリス経済学からは剰余価値学説を、フランス社会主義からは階級闘争の学説をそれぞれ継承したと定義しました。これは、フリードリヒ・エンゲルスの『空想から科学への社会主義の発展』で示された科学的社会主義の体系を、さらに明確に再定式化したものです。レーニンは、マルクスの学説が19世紀の最も偉大な学説を直接受け継いでいるからこそ、完全であると主張しました。

マルクス主義理論における位置づけ

「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」は、レーニンの著作『カール・マルクス』と並び、マルクス主義理論の基本文献として重視されてきました。この論文や『唯物論と経験批判論』などのレーニンの著作を通じて、マルクス主義哲学は弁証法的唯物論と史的唯物論に二分され、弁証法的唯物論を社会と歴史に適用したものが史的唯物論であると定式化されました。これらの見解は、マルクスの初期の著作が未公刊だった時期に提唱され、後にスターリン時代に公式見解として確立しました。

議論の余地

レーニンは、三つ目の構成部分である「フランス社会主義」については具体的な言及をしていません。実際には、マルクスは『資本論』において、フランス社会主義よりもオーエンなどのイギリス社会主義思想に多く言及しており、資本主義への最初の理論的挑戦として評価しています。この点は、レーニンの規定と実際のマルクスの思想との間に差異があることを示唆しています。

まとめ

「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」は、レーニンがマルクス主義の理論的基礎を体系的に解説した重要な論文です。この論文を通じて、マルクス主義が19世紀の偉大な思想を受け継ぎ、発展させたものであるというレーニンの主張が明確に示されました。しかし、フランス社会主義に関するレーニンの解釈は、実際のマルクスの思想との間にずれがある可能性も指摘されています。この論文は、マルクス主義を理解する上で、欠かせない文献の一つと言えるでしょう。

参考文献

岩淵慶一「東ドイツの新哲学教科書の批判的検討 (1) : スターリン主義哲学の復活」『立正大学文学部論叢』第47巻、立正大学、1973年。
小林榮三「解説」『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分 カール・マルクス ほか』新日本出版社、1999年。
小松善雄「『資本論』の社会主義像(上) : 国家社会主義か,市場社会主義か,協同社会主義か」『立教経済学研究』59(2)、立教大学、2005年。
小松善雄「ロバート・オウエンと『資本論』」『立教経済学研究』60(2)、立教大学、2006年。
田口富久治「マルクス主義とは何であったか?」『中亰法學』36(2)、中京大学、2001年。
ウラジーミル・レーニン 著、高橋勝之・大沼作人 訳「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分 カール・マルクス ほか』新日本出版社、1999年。
* ウラジーミル・レーニン 著、マルクス＝レーニン主義研究所 訳「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」『科学的社会主義の基礎』日本共産党中央委員会出版局、1988年。

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