剰余価値

剰余価値の概念

剰余価値（じょうよかち、英: surplus-value）はマルクス経済学における中核的な概念です。この用語は、労働者が生活に必要な労働を超えて働いた結果生じる価値、すなわち不払労働によって生み出された価値を指します。剰余価値はまた、資本の循環過程、「貨幣G-商品W-貨幣G'（G+ΔG）」における「ΔG」としても表されます。

マルクス経済学における基盤

マルクス経済学は、労働価値説に基づいており、商品の価値はその生産に必要な労働量によって決定されるという考え方です。資本家は労働者の労働力を使用して商品を生産し、その過程で労働者が必要とする生活に必要な労働（必要労働）と、それを超える剰余労働（不払労働）を組み合わせて価値を創出します。その結果生まれる価値が剰余価値です。

利潤は剰余価値によって生じるものであり、利子や地代などの形でも現れます。重要なのは、流通過程において商品が交換される際には剰余価値が生まれることはないという点です。不等価交換が起きても、社会全体の価値総額は変化せず、利潤が単なる売買の差額から生じるという見解は誤りです。

剰余価値の生成メカニズム

では、剰余価値はどのようにして生まれるのでしょうか。まず、労働力はその使用価値として独特な特性を持つ商品です。労働力商品の価値はその再生産に要する労働時間に基づいて決まります。しかし、実際の生産過程で投入される労働量は、労働力商品の価値を上回ることが通常です。この超過分が剰余価値となります。

労働者は自己の労働力の価値を超える価値を生み出す一方で、資本家が支払うのはその労働力商品の価値に相当する賃金だけであり、その結果、剰余価値に対する対価は支払われません。これが、資本に対する労働者の不払労働となり、マルクスが提唱した搾取の概念につながります。

剰余価値と『資本論』

カール・マルクスが剰余価値の概念を徹底的に解説したのは、彼の主著『資本論』です。この著作において剰余価値の概念は、価値の概念から発展したものとして位置づけられています。その過程には、（1）労働と労働力の区別、（2）労働者の搾取の認識、（3）資本主義的生産様式の歴史性の発見の三つの重要な飛躍が含まれています。マルクスは、価値の概念から剰余価値の概念にたどり着くまでに長い期間を要しました。

参考文献

• - マルクス著『資本論』今村仁司訳、筑摩書房（2005年）
• - マルクス著『資本論』岡崎次郎訳、大月書店（2000年）
• - マルクス著『資本論』向坂逸郎訳、岩波書店（1969年）
• - マルクス著『資本論』資本論翻訳委員会訳、新日本出版社（1982年）

これらの文献を通じて、剰余価値の概念およびその背後にある経済学的理論についての理解を深めることができます。

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