マルグリット・ユルスナール

マルグリット・ユルスナールの生涯と業績

マルグリット・ユルスナール（Marguerite Yourcenar、1903年6月8日 - 1987年12月17日）は、フランスを代表する小説家であり、多くの文学賞を受賞したことで知られています。彼女の本名はMarguerite Antoinette Jeanne Marie Ghislaine Cleenewerck de Crayencourで、ペンネームの「ユルスナール」は、姓のクレイヤンクールからのアナグラムです。

幼少期からの背景

ブリュッセルで、フランスの貴族の家に生まれたユルスナールは、幼い頃から父と家庭教師の指導の下、西洋の古典に親しみました。父は、彼女に広範な教育を施す一方で、第一次世界大戦の勃発により、ユルスナールの少年時代は様々な国を転々とする生活を余儀なくされました。これにより、英語やラテン語、さらにギリシャ語など、複数の言語を習得することができました。

文学の世界への足音

彼女の文学的キャリアは、1921年の自費出版した詩集『キマイラの庭』から始まります。その後、彼女は小説『渦』の執筆に取り掛かりますが、この作品の原稿は破棄され、その影響は後の作品『死者が馬車を導く』に見られました。また、1924年にはイタリアのヴィラ・アドリアーナを訪れ、後の代表作『ハドリアヌス帝の回想』の着想を得ています。

1932年に発表したピンダロスに関する研究書を皮切りに、彼女の作品は次第に評価されていきます。1935年からは、ギリシャやバルカン諸国に滞在し、旅行先での経験が彼女の作品におけるテーマに影響を与えました。

アメリカでの生活と国際的名声

1938年、ユルスナールはアメリカに渡り、1940年にはグレース・フリックという女性と深い関係を築きます。アメリカ滞在中には、フランス語や美術史を教えながら、文学活動を続け、1947年にはアメリカ市民権を獲得しました。最も有名な作品である『ハドリアヌス帝の回想』は、1951年に発表され、古代ローマの哲学や芸術に焦点を当てています。この作品は、彼女の名声を国際的に高める契機となりました。

晩年と影響力

晩年、ユルスナールは多くの文学賞を受賞し、1980年には女性として初めてアカデミー・フランセーズの会員に選出されました。しかし、1979年にパートナーのグレースが亡くなった後、彼女は悲しみとともにその生涯を終えます。1987年、マウント・デザート島で死去した彼女の遺産は、文学界に深い影響を与え続けています。

代表作品の数々

ユルスナールは、さまざまな形式で作品を発表しました。詩集、小説、劇作、エッセイと多岐にわたります。特に『アレクシス』は同性愛をテーマにした作品であり、当時の文学界において革新的な意義を持つものでした。また、『黒の過程』ではルネッサンス時代の哲学や宗教改革との複雑な関係が描かれています。

その作品は、文献研究を基にした巧妙な構築と、美的な文体により、読者に歴史と人間性を深く考察させる力を持っています。彼女が描いた登場人物たちは多様であり、それぞれの性格や状況が、普遍的なテーマを通じて表現されています。

ユルスナールは三島由紀夫を特に高く評価し、彼に関する評論を発表したことでも知られています。彼女の独特の視点が、今なお読まれ続ける理由です。彼女の業績は、文学史において重要な位置を占め、多くの後進作家に影響を与えました。

最後に

マルグリット・ユルスナールは、彼女の思想と作品を通じて、20世紀のフランス文学に大きな足跡を残した作家であり、彼女の文学世界は今なお多くの人々に感動を与えています。

もう一度検索