マルグレーテ1世

マルグレーテ1世：北欧連合を築いた女王

マルグレーテ1世（1353年 - 1412年）は、デンマーク、ノルウェーの摂政、そしてカルマル同盟を通じて北欧連合王国の実質的な支配者として、北欧の歴史に名を刻みました。彼女は正式な国王ではありませんでしたが、その政治手腕により、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3国を統治し、国王に等しい権力を行使しました。

生涯

マルグレーテはデンマーク王ヴァルデマー4世の娘として生まれ、10歳でノルウェー王ホーコン6世と結婚しました。1375年に父ヴァルデマー4世が亡くなると、後継者がいなかったため、マルグレーテが実質的な権力を握ることになりました。

彼女はデンマーク王国参事会の支持を得て、5歳の息子オーロフ2世をデンマーク王に即位させ、自らは摂政として政治を主導しました。1380年にホーコン6世が死去すると、オーロフ2世はノルウェー王位も継承し（オーラヴ4世）、マルグレーテはノルウェーの摂政にも就任。これにより、デンマークとノルウェーは同君連合となり、マルグレーテが両国の実質的な支配者となりました。

1387年、オーロフ2世が急逝すると、北欧では女性の王位継承が認められていなかったものの、デンマーク参事会はマルグレーテをデンマーク王国の後見人に選びました。女王の称号こそありませんでしたが、彼女は実質的な女王として、次期国王の選出権を得ました。1388年にはノルウェーも同様の称号をマルグレーテに与え、彼女は後継者として、姉インゲボーの娘マーリアの息子であるエーリヒ（後のエーリク3世）を指名し、ノルウェー王として迎えました。

スウェーデンとの関係

一方、スウェーデンでは、オーロフ7世（オーラヴ4世）の祖父であるマグヌス・エーリクソンが1364年に追放され、メクレンブルク家のアルブレクトが国王に選出されていました。マルグレーテは、このスウェーデン王アルブレクトを最大のライバルと見なし、1389年にデンマーク軍を率いてスウェーデンに勝利。アルブレクトを捕虜とし、スウェーデンに対する優位を確立しました。そして、捕虜となったアルブレクトに退位を迫りました。

カルマル同盟の締結

1396年、マルグレーテはエーリヒをデンマーク王（エーリク7世）およびスウェーデン王（エリク13世）として即位させ、北欧3国は実質的に同君連合となりました。1397年には、彼女の主導によりカルマル同盟が締結され、デンマークを中心とする国家連合が成立。この同盟により、北欧3国は1523年にスウェーデンが独立するまで同じ王を戴くことになりました。

マルグレーテは、正式な王ではありませんでしたが、幼い王の摂政として、また3国の後見人として、1412年に亡くなるまでカルマル同盟の実質的な支配者として北ヨーロッパを統治し続けました。彼女の政治手腕とリーダーシップは、北欧の歴史において特筆すべき功績として称えられています。

参考文献

武光誠『世界地図から歴史を読む方法』河出書房新社、2001年
川原崎剛雄（監修）『ヨーロッパの「王室」がよくわかる本』PHP研究所、2008年

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