マルコ・ドミニス

マルコ・アントニオ・ドミニス（1560年 - 1624年）は、アドリア海沿岸のラブ島（現在のクロアチア領）出身の哲学者、科学者として知られています。彼は、その多岐にわたる学問的業績と、宗教的転向によって、複雑な生涯を送りました。

ドミニスは、1600年にスパラートの大司教に任命され、聖職者としての地位を確立しました。同時に、学究肌の彼はパドヴァ大学で教鞭を執り、その知識と教養をもって多くの学生を指導しました。しかし、彼の人生はここで大きな転換期を迎えます。彼は英国国教会に改宗し、1616年にイギリスへと渡ります。

イギリス滞在中、ドミニスはケンブリッジ大学とオックスフォード大学で教鞭を執り、その学術的な才能をいかんなく発揮しました。1617年には、著書「De Republica Ecclesiastica」を出版し、その中で教皇を批判しました。また、1618年からはディーン・オブ・ウィンザー（ウィンザー主教）という要職を務め、英国国教会における影響力を高めました。

しかし、ドミニスの信仰は再び揺らぎます。彼はローマに戻り、英国国教会を捨てるという決断を下しました。この行動は、カトリック教会からの歓迎を期待させたものの、結果は残酷なものでした。彼は異端審問にかけられ、有罪判決を受けました。獄中でその生涯を閉じたドミニスの著作は、焚書処分となりました。

ドミニスの業績として特筆すべきは、虹の研究です。アイザック・ニュートンは、1704年に出版した著書「光学」の中で、ドミニスの虹に関する研究を紹介しました。ドミニスの研究は、ニュートンの光学研究に影響を与えたと考えられています。

マルコ・アントニオ・ドミニスは、その複雑な信仰と学術的な探求を通して、16世紀から17世紀にかけてのヨーロッパにおける思想と科学の発展に貢献した人物として、記憶されるべきでしょう。

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