マルセル・セルダン

マルセル・セルダン：栄光と悲劇のボクシング人生

マルセル・セルダン（Marcel Cerdan, 1916年7月22日 - 1949年10月28日）は、フランス領アルジェリア出身のプロボクサー。元世界ミドル級王者であり、その圧倒的な強さと、エディット・ピアフとの恋愛で世界中の人々を魅了しました。

生い立ちとボクシングへの道

セルダンは少年時代、サッカーに熱中していましたが、父親の勧めでボクシングを始めます。兄弟二人もボクサーというボクシング一家で育ちました。13歳でアマチュアデビューを果たし、1934年には18歳でプロデビュー。その後、ウェルター級とミドル級の両方で欧州王者となり、その才能を開花させます。

「無冠の帝王」として

強靭なフィジカルとラフで強打を誇る攻撃的なスタイルで、セルダンはKOの山を築き、その圧倒的な強さを示しました。メディアや強豪選手が彼の強さを噂するようになり、世界的に「無冠の帝王」として認識されるようになります。しかし、世界挑戦はなかなか実現しませんでした。

世界王座獲得と陥落

1948年9月21日、セルダンはついに世界初挑戦の機会を得ます。相手は“鋼鉄の人”トニー・ゼール。アメリカ・ニュージャージー州で行われた試合で、セルダンはスピードでゼールを圧倒し、11回に左フックでダウンを奪い、12回開始時点でKO勝利。世界ミドル級王座をフランスにもたらしました。祖国の国民は、この勝利に歓喜しました。

しかし、王座獲得からわずか9ヶ月後の1949年6月16日、セルダンは“ブロンクスの牡牛”ジェイク・ラモッタとの初防衛戦で、デトロイト（米国）で対戦します。この試合は、両者譲らず大激戦となりましたが、セルダンは途中で肩を負傷し左腕が動かせなくなります。それでも戦い続けたセルダンでしたが、10回TKO負けとなり、王座を明け渡すこととなりました。

悲劇的な最期

セルダンはラモッタとの再戦を熱望し、ラモッタもそれを受け入れ、ニューヨークでの再戦が決定します。セルダンは再戦の知らせに歓喜し、「勝つか、死ぬかだ」と言い残し、パリから空路で決戦の地へ向かいました。しかし、1949年10月28日、セルダンが搭乗したエール[[フランス]]の航空機が北大西洋アゾレス諸島付近に墜落。セルダンは帰らぬ人となりました。

ピアフとの愛

セルダンは、シャンソンの女王エディット・ピアフとの恋愛でも知られています。1947年10月、ピアフがアメリカで初公演を行った際に二人は出会い、恋に落ちます。ピアフはセルダンのために『愛の讃歌』（Hymne à l'amour）を作詞しました。この曲は、セルダンの死を悼んで書かれたものと思われていましたが、実際にはセルダンの生前に書かれたものでした。

セルダンの死後も、ピアフは彼のことを深く愛し続けました。セルダンの息子であるマルセル・セルダン・ジュニアのプロデビュー戦では、ピアフがリングサイドで観戦する姿が見られました。

遺産

マルセル・セルダンは、1991年に国際ボクシング名誉の殿堂入りを果たしました。彼の名は、フランスのブレストにあるドーム型施設にも冠されており、スポーツ施設として利用されています。また、息子のマルセル・セルダン・ジュニアもボクサーとなり、世界ランカーにまで上り詰めましたが、世界王座には届きませんでした。

マルセル・セルダンの生涯は、映画や舞台など、様々な形で語り継がれています。彼の強さ、愛、そして悲劇は、今もなお多くの人々の心を捉えて離しません。

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